京都の小さな老舗の「茶筒」が“イギリス進出”…認知度なしからわずか9年で「国立博物館の永久展示品」にまでなったワケ

京都の小さな老舗の「茶筒」が“イギリス進出”…認知度なしからわずか9年で「国立博物館の永久展示品」にまでなったワケ
(※写真:開化堂の製品)

明治8年創業の「手づくり茶筒」の老舗「開化堂」は、現在までの約150年間、激しい時代の変化に見舞われながらも、長くゆっくりと繁栄を続け、海外進出も果たしています。本記事では、開化堂の六代目当主である八木隆裕氏が、著書『共感と商い』(祥伝社)から、同社の「茶筒」がイギリスで受け入れられ、ついには同国の国立博物館の「永久保存品」になるまでに至った経緯について語ります。

家族のような付き合いの始まり

紅茶屋さんはティムさん夫婦で営まれていたのですが、最初は茶筒の売れ行きも穏やかで、一日中ゆったりと「僕はこういうふうに仕事をしていきたい」と言えば、「いや、それはお前こうじゃないの?」とかアドバイスをもらったりもできました。

 

また、お客様が来店した際には、「紅茶でも一杯淹れようか?」といった感じで、茶筒の感想やお店にきた目的なども聞きながら、ずっといろいろな話ができたのです。

 

そこから、ティムさんたちとの家族のような付き合いが始まっていきました。

 

当初から家族のような関係になることを狙っていたわけではありませんでしたが、あとから振り返って考えてみると、やはりこのとき家族のような関係への第一歩を踏み出せたことが、何よりも大きいことだったと思います。

誰を通じて、どこから海外に入っていくか

ポストカード・ティーズさんでの最初の実演販売は、お店の5階に寝泊まりしながら、9日間の実演販売をする形でスタートしました。

 

実演販売というのは、その場で茶筒の製作の一部を見せて、集まっているお客様に使い方を説明しながら、販売を行なっていくものです。

 

もちろん、店内でやるわけですから、火を使って金属を加工する作業はできません。披露するのは、バラバラになったパーツを木槌(きづち)や金槌で叩いて組み上げる作業のみです。ただ、購入してくださったお客様には、サービスでプレゼントする茶匙(ちゃさじ)に名前を彫らせてもらいました。

 

とはいえ、日本から持ち込んだ工芸であり、お客様は日本茶ではなく紅茶を飲む人々。四角い紅茶の缶が主流のお国柄です。

 

値段が100ポンドくらいする丸い茶筒なんて、手に取ってもらえないんじゃないか?

 

一体どのくらいのお客様が、これを買ってくれるのだろうか……?

 

はじめての海外実演において、僕にはそんな一抹の不安がありました。

 

しかし、結果は1週間で100万円以上の売上――。

 

「開化堂の茶筒は、世界に通用する商品なんだ!」

 

このとき、僕はそう確信したのでした。

 

ところが、その次に行ったパリの百貨店さんで、僕は大失敗することになります。その経験からも、僕は新たな学びを得ました。

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共感と商い

共感と商い

八木 隆裕

祥伝社

手づくり茶筒の老舗「開化堂」 創業明治8年、つくるモノは当時のままの茶筒。 ……にもかかわらず、 ●なぜ、令和の現在でもうまく続いているのか? ●ティーバッグやペットボトルの普及で茶筒がないお宅も多い中、…

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