ロンドンで茶筒が売れたワケ
ロンドンで茶筒が売れた理由は、一つには、ポストカード・ティーズさんという環境が、茶筒と相性が極めてよかったことです。それは紅茶屋さんなのはもちろん、オーナーのティムさんの家系にもありました。
ティムさんのお父さんはロンドンで名の知れた画廊の経営者であり、ティムさん自身も幼少期にアンディ・ウォーホルに絵を描いてもらったことがあるという、文化と教養がバックボーンにある家柄だったのです。
そういった方だったからこそ、私たちの茶筒や開化堂の歴史というものを汲んでくださり、ロンドンの人たちに伝わりやすいように、店頭で翻訳してくださっていたのですが、これはパリで茶筒が売れなかったことで、あとになってようやく気づいたのでした。
また、もう一つには、ロンドンの街と開化堂の茶筒の相性のよさもありました。
お店の一角で実演をしていたのですが、ロンドンの人たちの「ちょっと見にきたけど、これ何?」という少し斜に構えたトーンや、「いいね、いいね」とは表立って褒めてくれないけれど体感的によいと感じたモノを選んでいかれるところが、なんだか京都の人たちと似ていたのです。
きっと、「物柄」を大切にする気風が、ロンドンと京都で共通していたのだと思います。
そんな環境下だったからこそ、開化堂の茶筒はその後もロンドンにおいて、ミック・ジャガーさんの最初のパートナーだったビアンカ・ジャガーさん、BBCで10年以上番組を持っていたナイジェル・スレイターさんといった方々と出会うことができ、イギリスを代表する服飾デザイナーのマーガレット・ハウエルさんとのお取引にもつながりました。
そして、少しずつイギリスの人たちにも、知られるようになっていったのです。
すべては、ポストカード・ティーズさんに出会えた運、ということにもなるわけですが、僕はこのことから、どういった方を通じて海外の商いに入っていけるのか、どういった国や地域から入っていくのか、どういった方に最初に受け入れてもらえるといいのか、ということの重要性を痛感しました。
また、そういった相手の方に見つけていただける自分たちであること、自分たちがそういった鋭い感性を持つ方々に向き合えるだけのクオリティーを持っていないと立ち行かないことを、改めて感じさせられたのでした。