写真提供:永峰昌治建築設計事務所 写真:百武てつご

知られざる「日本の住宅とその性能」について焦点をあてる本連載。今回のテーマは「断熱リノベ」。寒すぎる日本の家を暖かく改修すれば、夏は涼しく過ごせて一石二鳥。本当はフルリノベーションをしたいけど、お金が……そんな人には部分的なリノベーションを。プロのお勧めをみていきましょう。

住みながら住まいを高性能化できるお勧めリノベ

そこで今回は、断熱フルリノベまではできないけど、窓の高断熱化に加えて、住みながら可能な範囲で、もう少し高性能化を図りたいという方にお勧めのリノベ工事について説明します。

 

お勧めリノベ① 窓の断熱リノベと併せて行いたい「玄関の高断熱化」

最初に取り組みたいのは、玄関の断熱リノベです。多くの日本の住まいは、玄関スペースが寒いですよね。これは、玄関扉の性能不足や、経年劣化による気密性の低下で、すきま風が入ってくることに起因しています。玄関ホールに面して、トイレや脱衣室・浴室がある間取りの家も多いと思います。トイレや脱衣室・浴室が寒い家は、ヒートショックリスクが高くなります。ヒートショックで毎年交通事故死者数の7倍以上の方が亡くなっている事実については以前ご説明(関連記事:『日本の家「寒すぎる脱衣所」…年間“約1.9万人”が亡くなる深刻』)したとおりです。玄関スペースに水回りが面している間取りの家は、玄関扉の断熱リノベを強くお勧めします。

 

玄関扉のリノベの工事は1日で完了しますし、鍵を差し込む必要がなく防犯性能も高い、最新のスマートコントロールキーにも変えられるので、安心・便利な暮らしに変わります。

【図表3】玄関リノベ
【図表3】玄関リノベ

お勧めリノベ② 「床の高断熱化」もコスパ抜群

窓・玄関の高断熱化にさらに加えるのならば、床の断熱がお勧めです。床の断熱性能が向上すると、冬の足下の寒さがだいぶ改善されます。

 

床の断熱リノベは、既存の床材を撤去して床の上側から施工する方法以外に、床下に人が入れるスペースがある場合は床下から施工することも可能です。後者の場合は、家具の移動等も行わずに施工できるので、かなり手軽ですし、工事費用も比較的リーズナブルです。

 

【図表4】
【図表4】

お勧めリノベ③ 床の断熱リノベの際には併せて施工したい「気流止め」

床の断熱リノベを行うのならば、併せて行いたいのが「気流止め」の施工です。日本の戸建住宅は、【図表5】のように床下から入り込んだ外気がそのまま壁内を通って小屋裏まで流れ込むような構造になっているケースが多くなっています。

 

【図表5】
【図表5】

 

この「気流」が室内の寒さ原因の一つになっています。一般的な住宅の場合、床下の空気の温度は外気温とほぼ同じです。その空気が壁内に入り込み、壁を通して室内の熱をどんどん奪ってしまうのです。この気流の流れを止める施工のことを「気流止め」と言います。

 

「気流止め」がないと、冬の室内が寒くなるだけでなく、カビや腐れ・シロアリ被害の原因になるため、要注意です。床下から侵入し壁内を流れる冷たい空気が、暖房されて暖かくなった壁を通るので、温度差により壁の中や壁の室内側の表面、壁近くの床の表面等で結露が発生するのです。結露は木材を腐らせたり、湿った環境を好むシロアリ被害のリスクが高まります。またカビ発生の要因にもなります。これらが生じると、当然、建物の耐震性能や居住者の健康にも悪影響を及ぼします。「気流止め」がないことは、日本の住宅の耐久年数が諸外国に比べて短い要因にもなっているのです。

 

「気流止め」とは、断熱材や気密部材による、床下・小屋裏と壁とを空間的に隔てて、この「気流」、つまり壁内の空気の流れを遮断するものです。「気流止め」には、袋入りのグラスウール断熱材や気密テープ、現場発泡ウレタンフォームなどが用いられます。「気流止め」の施工には、ノウハウや経験が必要です。リフォーム会社を選ぶ際には、この気流止めについて質問してみるのも、リフォーム会社のレベルを見極めるのに有効だと思います。

 

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