(※写真はイメージです/PIXTA)

児井正臣氏の著書『自然災害と大移住――前代未聞の防災プラン』より一部を抜粋・再編集し、「首都圏近郊の空き家問題」についてみていきます。

この地域で「人口減に歯止めがかかった」ワケ

ただ筆者の住む地域は、新たにコミュニティバスを走らせたことで人口減に歯止めがかかったかも知れない。今から約13年前、こうなることをある程度予想し、車がなくても生活できるまちにしようとコミュニティバス導入の運動を始め、筆者もこれに関わった。

 

ある一定以上のサービスレベルの公共交通が提供されればマイカーに取って代わるかも知れない、それによって高齢化が進んでも過疎化は免れるかも知れない。それには早朝から深夜まで1時間に最低2本、鉄道駅とを結ぶ運行が必要と考えた。

 

それを人口1000人程度のエリアで、平日1日300人程度の利用でも、行政の運行補助なしで採算がとれるものを目指した。

 

住民有志による導入推進協議会が中心となり、川崎市と折衝を重ねるなどして、あしかけ7年で運行開始にこぎつけた。マイクロバスの購入費用は市が出してくれたが、運行での赤字は地元多摩区に本社のある中小の貸切バス事業者が負担している。

 

初年度は事前アンケートの予想に比べ利用が少なく赤字額も大きかったが、利用者が年々増え、6年目に入った2020年には単年度黒字になると見込んでいたが、コロナ禍で利用者が大幅に減ってしまい目算が大きくはずれてしまっている。それでもここ2~3年、家を建て直し二世帯住宅にするケースが増えていることなどから人口減が止まっている。

 

また20年近く空き家だった大手企業の社宅跡地のひとつに107軒入る低層型マンションが建設中で、2021年早々に入居が始まった[図表]。

 

[図表]川崎市多摩区長尾6丁目世帯数の推移

 

コミュニティバスが走るようになってからの効果は、このような人口減に歯止めをかけたほか、住民同士がバス停や車内で挨拶を交わすようになるなど親睦が増し、街灯のLED化を進めるなど住民の「意識の共有化と共同での取り組み」姿勢が出てきたようにも思える。今後さらにスマートシティ化へも進めば良いと思っている。

 

一定のサービスレベルの公共交通提供により、車がなくても生活できるまちとなり、過疎化にブレーキをかけられるのでは、と当初考えていたことが、証明されつつあるのではないかと思っているが、これには単一の自治会のもとで進めることができたなどさまざまなラッキーが重なり、他所ではなかなか進めるのがむずかしいようだ。

 

それは人口150万の川崎市で、運行中のコミュニティバスが2件しかないことからも言える。

 

たまたま1000人前後の一つの住宅地で、住民の流出が減ったということではあるが、このようなやり方を1か所ずつ進めていっても大量に発生する空き家問題を解消させることはとてもできない。

 

もっと全体的に解消することを考えなければならない。それが自然災害危険地域からの大量の移住である。

次ページかつて相次いで出現した「ニュータウン」の末路

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『自然災害と大移住――前代未聞の防災プラン』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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