(※写真はイメージです/PIXTA)

児井正臣氏の著書『自然災害と大移住――前代未聞の防災プラン』より一部を抜粋・再編集し、人口が減少する日本で「新築住宅が減らない理由」についてみていきます。

新築住宅が減らない理由

誰もがより便利で環境が良く快適な住居を求めるのは当然であり、また結婚などにより新居を持ちたいと考え行動することは当然である。またそういう需要がある以上、住宅産業が成り立つのも当然である。

 

本来ならば、住宅総数が必要以上に増えないよう、人が住まなくなった住宅を整理解体するのが望ましいのだが、放置された空き家が増えているのに、新築が進みその結果住宅の総戸数はどんどん増えている。

 

さらに、人口を減らしたくないという市町村の事情と、常に新築住宅を作り売らなければならないようなビジネスモデルになっている住宅会社の事情、さらには資金の活用先を増やしたい金融機関の事情から、人口減少が明白であるにもかかわらず新築住宅は増えている。

 

●人口減少を食い止めたい自治体の事情

 

市町村など自治体にとって人口減少は税収減や地域経済減退につながるのでなんとしても避けたいものだ。総人口が減るなかで、自分のところの人口を減らさないためには近隣の他市町村から住民を引き抜いてくることしかない。すなわち自治体間での住民の取り合いとなる。

 

それも市街地の中心部や周辺ですでに発生している空き地や空き家を埋めるようにすれば良いのだが、実際は前述のような理由からそれがなかなかできず、それらを放置したまま別の場所に住宅を新築させようとする。住宅はどこに建てても良いというものではない。

 

大多数の自治体では都市計画法にもとづく市街化区域と市街化調整区域との線引きをしている[図表1]。

 

面積・区域数は2014年度都市計画年報のデータを使用 野澤千絵『老いる家崩れる街』(講談社現代新書)を参考に作成
[図表1] 面積・区域数は2014年度都市計画年報のデータを使用
野澤千絵『老いる家崩れる街』(講談社現代新書)を参考に作成

 

市街化調整区域は通常は市街地の外周部の、乱開発を防ぐために定めた区域であり、家を新たに建てることはできない。しかし種々の事情から、その後例外区域ができ、調整区域でも建てられるようになった。

 

だがもともと調整地域というのは森林や田畑がほとんどで、地域の環境維持を考慮しなければならないはずだったのが、人口維持のためにはどこでも良いから、なりふり構わず人に住んでほしいということで、自治体はその例外区域をどんどん作って行ったようだ。

 

しかし現実にはそれらの新築住宅は従来の市街地から遠く、交通も不便なものが多く、新築しても入居者が少ない、すなわち新築空き家となっているものが多く、自治体が目論んだ人口増加や維持には貢献していないケースが多いと聞く。

次ページ社会問題にも…「土地所有者」と「住宅会社」の事情

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『自然災害と大移住――前代未聞の防災プラン』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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