地銀では顧客と長く付き合えるよう人事運用を見直し
銀行員は3~5年で転勤があるといいましたが、地銀のなかにはこの制度を見直しているところがあります。つい先日も日本経済新聞で「担当者が顧客を長く担当できるように人事運用を改め始めた」との報道がありました。
地銀には本来の使命として「地域に密着」があります。しかし一定期間で異動させると顧客の課題にじっくりと向き合うことが難しく、本来の機能を果たしにくいのです。
この問題に切り込んだのが金融庁の監督指針改定で、これを受けて地銀は人事改革に動き出しました。
実は金融庁は、かねてより事故防止の観点から一定期間で人事異動するよう地銀に求めてきたのですが、「短期間で担当が交代すると一貫性のある支援がしにくい」「相互理解が深まらない」という地銀や顧客の声があり、2019年12月に監督指針を改定したのです。この改定では地銀が担当期間を柔軟に決められるようになりました。
今回の改定の背景には、政府が中小企業の支援強化をしていることもあります。その取り組みの一つが事業性評価融資なのですが、事業性を見極めたうえで融資するには顧客企業の状況に精通していなければなりません。
また社長の悩みや本音をヒアリングできる信頼づくりが欠かせません。例えば長野銀行は従来3年で異動が通例でしたが、これからは少なくとも4~5年の任期に延長する方針です。山口フィナンシャルグループも支店長クラスの在任期間を延ばすと明言しています。
その一方で、任期が長くなることの副作用もあります。地銀の人事異動にはさまざまな支店を経験させることでスキルを養う狙いがありますが、千葉銀行は人事ルールを柔軟に運用するものの「担当期間が長くなり過ぎると新しい仕事を経験する機会が減りかねない」と懸念を示しています。
また任期が長くなることによる不祥事のリスクにも気を付けねばなりません。米国のコミュニティーバンク(中小の地域金融機関)では、20年という長期で顧客を担当するのが一般的ですが、日本でそれがなじむかは判断の難しいところです。
課題はあるにしても任期は長めになる方向なので、腰を据えて担当者との信頼関係づくりはしていけます。