GAFAが人材採用で負けることがあるのか?
▶これからの時代に求められる“採用のカタチ”
■社員がメディアになり、ストーリーを伝える
社会構造や求職者の情報収集のトレンドを踏まえた時に、今後求められていく採用のカタチとはいかなるものなのでしょうか。
企業視点で見ると、日本は転職潜在層が95%を占め、今後労働人口がますます減少するなかでは、小さなパイを奪い合う戦いが続きます。
求職者視点で見ると、自身が受け取る情報量が各段に増え、よりリアルで自分に適した情報を信頼するようになります。
企業がより自社に合った優秀な人材を獲得するために、また個人がより自分に合った最適な就職を果たすために、より解像度の高い情報流通が何よりも求められます。
このような時代だからこそ、企業は競合と同じように募集をかけるのではなく、転職潜在層にも魅力を伝えられる手法を考え、中長期にわたって人材獲得競争力、つまり企業競争力を高める「戦わない採用」を見出す必要があるのです。
この「戦わない採用」として注目されるのが、リファラル採用です。
リファラル採用は、端的にいうと、会社で働く社員の紹介によってリアルな情報を市場に流通させて採用していく方法です。自社の職場の魅力を求人広告で表現しても、なかなか信用されないことは先述しました。
ただ、自社で働く社員の声だったらどうでしょう? 「うちの会社はベンチャーだから確かに忙しい。でも、自分で手を挙げれば色々なプロジェクトを任せてもらえるし、半年や1年で確実に力がついていると感じる。実際に、3年で経営の一端を任されている社員もいるよ」といったことが、リアルなストーリーとして、より解像度高く伝わっていくでしょう。
社員がメディアとなり、友人・知人に自社の魅力を伝え、採用につなげていく。これがリファラル採用なのです。
■AirbnbはなぜGAFAに勝てたのか
Z世代は、「自分がこの会社で働く意義」「パーソナル・パーパス」を重視する価値観を持っているとお伝えしました。
逆にいえば、「働く意義」をきちんと伝えられれば、条件面では大企業に勝てなくとも、優秀な人材を獲得できるともいえます。実際に海外ではそうした事例がいくつも登場しています。
例えば、優秀なエンジニアの獲得競争という点でいうと、Airbnbの競合はGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)になってきます。条件だけではGoogleなどの企業に勝つことは難しいですが、実際に優れたエンジニアがAirbnbを選んで入社する状況が起きています。
それは、「旅が好きで、旅が自分のライフスタイルになっている優秀なエンジニア」に向けて、「入社すれば、どこにでも働く場所がある」ということを自社のパーパスと紐付けて伝えていったからです。こうしたパーソナライズされた採用活動を行い、Airbnbは採用マーケティングの勝者となっています。
Airbnbの事例からもわかるとおり、リファラル採用はこうしたパーソナライズされた採用活動を可能にします。逆にいうと、自社のほしい人材やその人材の解像度が低いと機能しにくくなります。つまり、企業は自社の現場ではどういった人材が求められているのか、ターゲットとなる候補者はどういう志向性を持っているのかなどをつぶさに理解しておく必要があります。
パーソナライズされた採用活動となるリファラル採用は、自分自身の働く意義と自分自身の存在意義を連続して考えるZ世代に対して、非常に有効な採用手法だといえるのです。
鈴木 貴史
株式会社TalentX(旧株式会社MyRefer) 代表取締役CEO