情に訴えるしつけ
これは、自分にとって大切な人を悲しませてはいけないという理由から好ましい言動を取るようになることを期待したものです。
「お母さん悲しくなるからやめてちょうだい」とか「大好きなおばあちゃんを悲しませることはやめようよ」などと言うことで、情に訴えるしつけです。子どもが、自分の言動によって周囲の人がどのような感情を抱くのか、子ども自身が気づき、自分を取り巻く人の気持ちに少なからず影響を与えていることに注意を向けることにつながります。
たとえば、子どもが「誰にも迷惑をかけない行動だから、放っておいてほしい」と思っていたとしても、大切な人を心配させたり悲しませたりすることはつらいことでありよくないことだという思いに気がつくことは大事なことです。
しかし、思春期になって親に対する関心が薄れたり、反抗的になったりすると、「るせーな! 勝手に泣いてろ! そんなこと知るか!」という気持ちになりかねません。また、情けを多用すると、子ども自身が主役ではなく、ほかの家族が主役になってしまうということにもなります。
子どもが親心に気づくのは容易ではありません。しかし、相手の気持ちになってみる機会を作ることは、その後の成長と社会生活に必要なことです。
親を喜ばせるためだけの成長ではありませんが、好ましい行動が取れたときに「嬉しいよ!」と、心から成長を喜ぶメッセージを伝えるほうがよいかもしれません。
脅すしつけ
親は子どもをしつけるときには、脅すしつけを用いることが多いように思われます。
おとぎ話の読み聞かせも、じつは「いいつけを守らない子にはこんな恐ろしいことが待っているよ」という内容を含んでいるものが多く見られます。たとえば、「嘘をついたら閻魔(えんま)様に舌を引き抜かれるよ」とか……ちょっと古いですか。
世の中に子どもへの脅しは溢れているといっても過言ではありません。しかし、脅しはどこまでいっても単なる脅しにすぎません。
「そんなに困らせるなら、母さん出ていくからね!」と言ってみても、子どもは母親が3時間以内には戻ってくることを知ってしまうでしょうし、「言うことを聞かない子は病院で注射をしてもらうからね!」と脅すと、病院はお仕置きの場として認知されるかもしれません。
神様を信じる子どもに対して、最も強い脅しは「神様の罰が当たる」ということかもしれません。
子どもによって怖いと思うことはそれぞれ異なります。天文学が好きな子どもに対して「そんなことしたらブラックホールに吸い込まれるぞ」と脅したら、子どもが怯えて大変な事態になったという相談もありました。