雑所得よりも事業所得のほうが節税できる
所得税や住民税の節税面で比較すると、雑所得よりも事業所得のほうが有利です。その理由は大きく分けて2つあります。
まずは、事業所得は「青色申告」という制度を利用できるという点です。青色申告には、節税効果のある優遇措置が複数用意されています。
一方、雑所得の場合、青色申告を利用できないので、事業所得よりも税金が高くなりがちです。
次に、「赤字を損益通算できる」という点も事業所得のメリットです。たとえば、給与所得500万円の人が事業所得は200万円の赤字だった場合、確定申告をすると2つの所得が相殺され、所得金額300万円として税金を計算できます。
雑所得の場合、いくら大きな赤字が出たとしても、「なかったもの」とみなされるので、他の所得と相殺できません。
ただし、赤字を申告する際に注意したいのは、毎年事業所得の赤字を確定申告して、給与所得などと相殺していると、税務署から「事業所得ではなく、雑所得」と判断される可能性があることです。
事業所得の赤字申告が認められているとはいえ、あまりに続くと、「何年も赤字続きなのはおかしい」「節税目的のために事業所得と装っているのでは?」と見られてしまいます。
前述のとおり、きちんと帳簿を作ることも欠かせませんが、それ以前に、「これは事業として行っている」と自信をもって説明できることも大切です。最初は赤字でスタートしたとしても、いずれ継続的に利益を上げられる状態を作るようにしましょう。
事業所得にはデメリットもある
事業所得は雑所得よりも有利と説明しましたが、逆に不利となるケースがないわけではありません。
まずは、事業所得に対しては、地方税のひとつである「事業税」がかかるという点です。
事業税の基本的な計算方法は、事業所得のうち290万円を超えた金額に対して、一定の税率を掛けるというものです。青色申告の場合はボーダーラインが290万円より上がりますが、ひとまず290万円という基準をイメージしてください。
事業税の税率は業種によって違い、たとえば東京都で物品販売業を営んでいた場合、税率は5%となります。実は事業税の対象にならない業種もあり、文筆業や漫画家などが該当します。
事業所得ではなく雑所得として確定申告をした場合も、基本的に事業税はかかりません。
事業税はあくまでも事業所得を基準に計算されるので、この点では雑所得のほうが有利ということになります。
このように、所得税や住民税の面では事業所得のほうが有利ですが、その代わりに事業税の負担というデメリットがあることを理解しておきましょう。
もうひとつ、「記帳や確定申告が面倒」という点も事業所得のデメリットに挙げられます。
雑所得の場合、1年分の売上と必要経費を集計して、その金額をまとめて確定申告書に記載するだけなので、あまり難しくはありません。
でも事業所得の場合、確定申告書とは別に、売上や必要経費の内訳をまとめた書面を提出する必要があります。
さらに青色申告を行うには、複式簿記という形で記帳をして帳簿にまとめなくてはならないので、税理士に依頼したり、自身で会計ソフトを使ったりする必要があります。