「空き家」をいますぐ売らないと大損する理由…期限が迫る「3,000万円控除特例」と政府が目論む「固定資産税4倍」【元国税専門官が解説】

「空き家」をいますぐ売らないと大損する理由…期限が迫る「3,000万円控除特例」と政府が目論む「固定資産税4倍」【元国税専門官が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

家を「買う」ときの節税方法として住宅ローン控除がありますが、住宅を「売る」ときにも、節税効果の高い特例がいくつかあります。本記事では元国税専門官である小林義崇氏が、新刊著書『会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて』(PHP研究所)から、家を売るときにかかる税金と、それを抑えるための「特例」について、場面ごとに整理して解説します。

不動産を売るなら5年はもつべき

住み慣れた家の売却を考えるときは、まずは税金がかかるのかを確認し、そのうえで有利な特例の条件を確認しておきましょう。

 

土地建物などの不動産を売却した場合、「譲渡所得」として所得税や住民税が課せられます。

 

この譲渡所得は、「譲渡収入-取得費-譲渡費用」という算式で求められます。計算した結果がプラス、つまり売却益が出たなら税金がかかり、ゼロやマイナスになれば税金がかからないというのが基本です。

 

譲渡収入とは、主に不動産を売却したときの売却代金を指します。たとえば土地を1,000万円で売却したのであれば、譲渡収入は1,000万円。厳密には売却代金の他にも譲渡収入になるものがありますが、ひとまず「売値=譲渡収入」とイメージしておきましょう。

 

次に、「取得費」とは、その名のとおり、不動産を取得するためにかかった費用のことで、購入代金の他、購入時に支払った手数料なども含まれます。相続によって引き継いだ不動産であれば、もともとの所有者が購入したときの金額を取得費として引き継ぎます。

 

このように、取得費は税額を抑えるために重要な要素になりますから、不動産を買ったり家を建てたりするときは、契約書などは捨てずにもっておきましょう。

 

取得費を計算するときに押さえておきたいのが、「減価償却」というルールです。建物の場合、老朽化によって価値が目減りするという考えから、実際の購入費用から減価償却費を差し引いて残った金額しか取得費として認められません。

 

減価償却費は、「建物を取得したときの費用×0.9」を基準に、構造(木造、鉄筋、他)などに応じて計算されます。たとえば3,000万円で建てた木造の家を30年後に売ったとしたら、取得費はこのように計算されます。

 

〈減価償却費〉

3,000万円×0.9×木造物件の償却率0.031×30年=2,511万円

 

〈取得費〉

3,000万円-2,511万円=489万円

 

新築から何十年も経っている建物の場合、取得費として認められる金額は少なくなってしまいます。少なくとも譲渡収入の5%は取得費として計上できるルールがありますが、取得費5%ということは売った代金のほとんどが所得になるので、税金は高くなります。

 

「譲渡費用」も譲渡所得の計算で差し引けるものです。譲渡費用の代表例は、登記費用、仲介手数料、売買契約書に貼付した印紙代です。

 

このように、「譲渡収入」「取得費」「譲渡費用」を把握できたら、譲渡所得を計算できます。結果、譲渡所得がプラスになったなら、税率を掛けて税金を計算します。

 

譲渡所得にかかる税率は、所有期間によって2パターンに設定されています。売却した年の1月1日時点において所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得、5年以下であれば短期譲渡所得と区分されます。

 

次のとおり、長期と短期で税率に2倍近い差がありますから、とくに急ぐ事情がなければ、長期譲渡所得になるのを待ってから売却をしたほうがいいです。

 

・長期譲渡所得:所得税15.315%・住民税5%

・短期譲渡所得:所得税30.63%・住民税9%

次ページ自宅の売却益は3000万円まで非課税
会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて

会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて

小林 義崇

PHP研究所

自動的に適用される節税の制度が次々と廃止され、 任意で使える節税の制度が増えている。 だからこそ、知識の違いで税金の負担に大きな差が出る! 2022年度の租税負担率と社会保障負担率を合わせた国民負担率は5割近くに上…

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