増税のターゲットはサラリーマン・高所得者
税金のしくみは毎年変わりますが、近年顕著になっているのがサラリーマンや高所得者をターゲットにした増税です。以下は一例ですが、サラリーマンの税負担に直結する改正がなされています。
〈2018年改正〉
・年間所得900万円超の人の配偶者控除・配偶者特別控除額を引き下げ
〈2020年改正〉
・年収850万円超の人の給与所得控除額を引き下げ
・公的年金など以外の年間所得1,000万円超の人の公的年金等控除額を引き下げ
・年間所得2,400万円超の人の基礎控除額を引き下げ
サラリーマンの所得税や住民税は、給与所得に基づき計算されます。この給与所得は、給与収入から給与所得控除額を差し引いて計算します。当然ながら給与所得控除額が多いほうが、税金の負担が下がるわけですが、この控除額が度重なる税制改正により減っているのです。
1974年から2012年まで給与所得控除に上限はありませんでした。年収がいかに高くとも、一定の割合を掛けた金額を差し引いて所得を計算することが可能だったのです。
しかし、2013年に給与所得控除額の上限が245万円に設定され、年収1,500万円を超えると控除額が一切増えない形になりました。これは高所得者をターゲットにした増税に他なりません。さらにその後も給与所得控除の改正は続き、[図表2]のとおり縮小されてきました。
給与所得控除額の引き下げに加えて、使い勝手のよかった減税措置のいくつかが廃止されたことも気になる点です。
私が東京国税局に入った2004年には、65歳以上のほぼすべての人が対象となる「老年者控除」や、所得税の20%、住民税の15%が一律減額される「定率減税」といった制度がありました。
これらの制度はとくに手続きをせずとも税負担を下げてくれていたのですが、すでに廃止されています。
その一方で、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」や「ふるさと納税」のように、新しい節税方法も登場しています。これらは自動的に適用されるものではなく、自身が主体的に動かなくてはいけません。
こうした傾向から言えるのは、節税のための行動を何も起こさずにいると、税負担は自然と増えてしまうということです。最初は気にならないとしても、これが何年も積み重なると税負担の差は著しいものになります。