(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸で論争のタネとなりやすい「水回りの経年劣化」。どこからが借主の負担で、どこからが貸主の負担となるのでしょうか? 本記事では、水回りの経年劣化について過去裁判にもなった貸主負担となるケースを、柿沼彰法律事務所の柿沼彰弁護士が3件厳選して解説します。

オーナーができるトラブルの予防法

水回りの経年劣化は避けられないものです。そして、水回りの経年劣化は建物の内部で進行するため、すぐに気づくことができません。

 

そのため、建物のオーナーには、2件目にご紹介したケースのように経年劣化の状況を確認せずにいるのではなく、定期的な点検やメンテナンスをすることが求められます。また、壁の染みなどの異常を発見した場合には、被害が拡大するまで放置せずに、早めに対応をすることも求められます。

 

法律的な予防策としては、3件目でご紹介したケースのように、賃貸借契約書に、借主にも水回りの経年劣化の早期発見に協力する義務を課すことが考えられます。さらに、賃貸借契約において、経年劣化の修繕を借主負担とする特約をすることも考えられますが、このような特約が有効となるためのハードルは高く、先に触れた最小二判平成17年12月16日においても、特約の成立が否定されています。

 

予防策とは異なりますが、水回りの経年劣化は発見しにくいこと、1件目にご紹介したケースのように損害額が大きくなってしまう場合が多いこと、これらのことからオーナーには漏水事故にも対応した火災保険に加入することが求められます。ただし、定期的な点検やメンテナンスを怠っていた場合には、漏水事故が発生した際に保険免責となってしまう可能性があるので、注意が必要です。

トラブルが起きたときのオーナーの対処法

水回りのトラブルの原因は、配管の老朽化による破損、異物を流して詰まってしまった、台風時の雨の吹込み、などさまざまなものがあります。5階で生じたトラブルの被害が1階で生じることもあります。そのため、原因の究明は困難です。また、漏水を放置していると、被害が拡大して、修繕費用が高騰してしまいます。そのため、トラブルが起きた場合、オーナーには、原因が判明する前でも、ただちに修繕の手配等の対処をすることが求められます。

 

水回りのトラブルが発生したものの、原因がわからないという場合、可能性が高いと思われる原因を修繕工事等によってひとつずつ潰していき、トラブルが収まるまで工事を繰り返すことになります。この負担を軽減するためにも、定期的な点検やメンテナンスを行い、トラブル発生時に原因を特定しやすくするように備えておくことが大切です。

 

 

柿沼 彰

柿沼彰法律事務所 弁護士

 

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