(※写真はイメージです/PIXTA)

宮崎駿監督はひたすら「面倒くさい」と言いながら絵コンテを描いています。このテレビ番組がけっこう共感を呼んで話題になりました。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)で解説します。

人は面倒くさいことに取り組んでいる

■老いるのは、面倒くさいものだ

 

NHKの人気番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」で、アニメーターで映画監督の宮崎駿さん特集があり、この番組の中で、宮崎さんがひたすら「面倒くさい」と言いながら絵コンテを描いていました。これがけっこう共感を呼んで話題になりました。

 

「あー面倒くさい」
「何が面倒くさいって、究極に面倒くさいよね」

 

クリエイターの宮崎さんの頭の中にあるイメージを絵コンテにしていく。もう自分の中では完ぺきにできあがっているものを、スタッフにわかるように手を動かして描いていく。たしかに面倒くさい地道な作業です。

 

作家なら口述筆記という手もありますが、アニメの命は絵ですから、人に伝えてイメージ通りに描いてもらうのは難しいでしょう。

 

「面倒だー」と愚痴りながらも、自分で机に向かわないといけないのです。

 

「面倒くさいっていう自分の気持ちとの闘いなんだよ」

 

とも言っていました。

 

たぶん若かった頃は、面倒とは思わなかったのではないでしょうか。描くことが楽しくて、何時間でも描いていられたと思います。宮崎さんも年をとり、集中するのに疲れ、面倒だと思うようになったのではないかと考えます。

 

そして、宮崎さんは、

 

「世の中の大事なことって、たいてい面倒くさいんだよ」

 

とも言います。

 

面倒くさい自分との闘いをしているのは、いい作品をつくりたいためです。目的はいい作品をつくりたい。そのために面倒くさいこともやっていかないといけません。

 

私たちも毎日、面倒くさいことに取り組んでいます。

 

「私は宮崎駿監督のように仕事もしていないし、クリエイターではないから」

 

という方々も、毎日の生活をつくっていっているのは自分です。

 

ご飯を食べるのも、運動するのも、着替えるのも、役所の書類記入や通院、人と交流したりするのも、子どもに連絡して「元気だ」と言うのも面倒に感じるときもあるでしょう。

 

面倒でも生活を創造し、生きていかなくてはいけない。

 

みなさんも私も同じです。70代からはよりいろいろなことが面倒になると思いますが、私たちは「どっこいしょ」と立ち上がらなくてはいけないけれど、それが満足な生につながると私は信じています。

 

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

 

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本連載は和田秀樹氏の著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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