人は面倒くさいことに取り組んでいる
■老いるのは、面倒くさいものだ
NHKの人気番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」で、アニメーターで映画監督の宮崎駿さん特集があり、この番組の中で、宮崎さんがひたすら「面倒くさい」と言いながら絵コンテを描いていました。これがけっこう共感を呼んで話題になりました。
「あー面倒くさい」
「何が面倒くさいって、究極に面倒くさいよね」
クリエイターの宮崎さんの頭の中にあるイメージを絵コンテにしていく。もう自分の中では完ぺきにできあがっているものを、スタッフにわかるように手を動かして描いていく。たしかに面倒くさい地道な作業です。
作家なら口述筆記という手もありますが、アニメの命は絵ですから、人に伝えてイメージ通りに描いてもらうのは難しいでしょう。
「面倒だー」と愚痴りながらも、自分で机に向かわないといけないのです。
「面倒くさいっていう自分の気持ちとの闘いなんだよ」
とも言っていました。
たぶん若かった頃は、面倒とは思わなかったのではないでしょうか。描くことが楽しくて、何時間でも描いていられたと思います。宮崎さんも年をとり、集中するのに疲れ、面倒だと思うようになったのではないかと考えます。
そして、宮崎さんは、
「世の中の大事なことって、たいてい面倒くさいんだよ」
とも言います。
面倒くさい自分との闘いをしているのは、いい作品をつくりたいためです。目的はいい作品をつくりたい。そのために面倒くさいこともやっていかないといけません。
私たちも毎日、面倒くさいことに取り組んでいます。
「私は宮崎駿監督のように仕事もしていないし、クリエイターではないから」
という方々も、毎日の生活をつくっていっているのは自分です。
ご飯を食べるのも、運動するのも、着替えるのも、役所の書類記入や通院、人と交流したりするのも、子どもに連絡して「元気だ」と言うのも面倒に感じるときもあるでしょう。
面倒でも生活を創造し、生きていかなくてはいけない。
みなさんも私も同じです。70代からはよりいろいろなことが面倒になると思いますが、私たちは「どっこいしょ」と立ち上がらなくてはいけないけれど、それが満足な生につながると私は信じています。
和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長
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