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会社の経営権の譲渡は、株式の生前贈与・相続・売却といった方法で行われます。後継者が引き継ぐ議決権のある株式の保有割合によって、経営権や支配権に影響を与える点に要注意です。みていきましょう

株式を後継者に承継する方法

経営権や支配権を後継者へ引き継ぎ事業承継をするには、経営者の持っている議決権のある株式を後継者へ承継させます。代表的な方法として『株式譲渡』の手法を紹介します。

株式譲渡とは

株式譲渡はM&Aでよく用いられる手法です。会社の株式を後継者に譲渡することで、保有するあらゆる資産や負債を含め、会社を丸ごと譲り渡します。あらかじめ議決権のある株式を経営者のもとに集約させていれば、後継者は株式譲渡により会社の株式を100%取得し、会社の支配権を取得可能です。第三者へのM&Aだけでなく、親族内承継でも用いられる手法です。

譲渡には時間的余裕を見て臨む

実際に株式譲渡によって事業承継を行うには、手続きに時間がかかります。また後継者の育成もすぐにできるわけではありません。そのためできるだけ早いタイミングで、後継者が経営に携われる体制を作ります。

 

経営者の持つ広範囲の経営権を引き継ぐには、単にノウハウを知るだけでは不十分です。センスや素質までも承継するには時間がかかるため、経営者が主体となって会社を経営しているうちは育ちにくいでしょう。後継者が経営の主体となっていけるよう、十分な期間をかけて育成していく必要があります。

株式を承継する方法

会社の株式を承継するのが親族であれば、『生前贈与』や『相続』が代表的な承継方法です。また従業員や第三者が承継する場合には、『売却』による承継が行われます。

生前贈与

経営者が生きている間に株式を引き継ぐ方法が生前贈与です。生前贈与によって株式を承継すれば、後継者としての地位が安定しますし、安定的な事業承継を実施できます。ただし贈与を受けると贈与税を負担しなければいけない点に注意しましょう。そこで暦年課税制度の控除額の上限である『年110万円』を利用します。毎年110万円の範囲内で贈与すれば、贈与税の負担を抑えられるでしょう。

 

また相続時精算課税制度を利用すれば、2,500万円までの贈与には、税金がかかりません。ほかに、贈与税の猶予や免除の制度を受けられる、事業承継税制を活用する方法もあります。

相続

相続で株式を引き継ぐ場合、承継のタイミングは経営者の死亡後です。確実に後継者へ株式を引き継がせるには、経営者が生前に法的に有効な『遺言書』を作成しておくとよいでしょう。『遺産分割協議』による相続では、株式を含め法定相続人で分割しなければいけません。会社に関わらない相続人が経営に必要な資産を相続することで、経営に支障をきたす可能性もあるでしょう。

 

ただし法的に有効な遺言書があっても、相続人が最低限受け取れる『遺留分』には対策できません。スムーズに相続し会社経営を続けられるよう、弁護士や司法書士などの専門家に相談しておくと安心です。

 

また毎年増え続ける自社株の財産により、相続税は大きな金額になりがちです。相続税を支払うための資金も用意しましょう。

従業員や第三者への売却

従業員や第三者を後継者とするときには、株式を売却します。この場合には、後継者の『資金不足』に注意しましょう。能力や意欲が十分であっても、資金が不足していては売却できません。資金不足が問題となるのであれば、『日本金融政策公庫』の融資や『事業承継税制』の活用を検討しましょう。資金の不足分を補ったり、贈与税の負担を抑えたりできます。売却によって株式を承継すると、経営者は売却益の受け取りが可能です。経営者にとっては、引退後の生活資金を確保できる方法でもあります。

経営権の譲渡は早めの準備と対策を

事業譲渡を実施するときに、後継者が経営者から引き継ぐものの一つが経営権です。会社の経営に関する決定権を指し、議決権のある株式の保有数が半数以上の場合に認められます。

 

加えて経営理念や取引先・従業員・取締役の地位なども、後継者が引き継ぐ資産です。全てをスムーズに承継するには、早めの準備が欠かせません。相続発生時を見越した対策も重要です。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。

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