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所有と経営の分離とは株式会社の原則で、資金を提供しているオーナーと事業の意思決定を行う経営者が別であることを指します。これにより会社にはどのような影響があるのでしょうか? みていきましょう。

株式会社の原則

株式会社は、資金を提供した人が株主になり、株主が意思決定を行う株主総会で選出された人が経営者となります。この仕組みは『所有と経営の分離』と呼ばれるもので、株式会社の基本的な仕組みです。

所有と経営の分離とは

会社の経営者だからといって、必ずしも会社の所有者とは限りません。株式会社には所有と経営の分離という原則があるため、資金を出している株主に、事業に関する意思決定を一任されている経営者もいます。

 

豊富な資金力のある人が、必ずしも高度な経営能力を併せ持っているわけではありません。また経営能力に優れている人物でも、資金を持っていない場合もあります。会社の業績を高めるには、資金力と経営能力のどちらも必要です。所有と経営の分離により、株式会社は潤沢な資金と卓越した経営手腕の両輪を備えられます。

所有と経営の分離の特徴

株主が会社を所有し経営者が事業に関する意思決定を行う所有と経営の分離には、どのような特徴があるのでしょうか?不祥事の防止や資金調達のしやすさについて解説します。

ガバナンス強化

不祥事が起こりやすい会社は、ルールを守る意識が希薄で、経営者の判断に対して意見しにくい雰囲気があります。このような状態を改善するために必要なのが、企業統治とも呼ばれる『ガバナンス』です。

 

ガバナンスを強化するには、社外の管理者による経営の監視が役立ちます。所有と経営の分離により、株主と経営者が異なる体制となっていれば、所有者である株主は利益増を目的に、不祥事を防ぐ取り組みを実施します。

 

その結果ガバナンスは強化され、監督機能が働かないことによる問題は回避しやすくなるでしょう。

資金調達がしやすい

所有と経営が分離している会社は、資金調達がしやすくなります。所有者と経営者が同一の場合、その状態を維持するには、一定割合以上の株式を保有し続けなければいけません。そのため株式の発行には制限があります。

 

一方、所有と経営が分離していれば、経営者の株式の保有割合を気にせず、株式発行による資金調達が可能です。株式発行により調達した資金は、金融機関からの借入金と異なり、返済の義務はありません。

 

また融資を受ける際のような審査も不要です。比較的自由度の高い資金調達方法といえます。

日本の中小企業の場合

所有と経営の分離は、外部からの監視機能を強化したり、資金調達をしやすくなったりする点が特徴と分かりました。しかし国内の中小企業の多くは、所有と経営が一致しています。外部から経営者を招くことによる注意点も見ていきましょう。

所有と経営が一致するケースが多い

国内の中小企業は、株主である所有者が経営者を兼ねているケースが数多くあります。経営者としての頑張り次第で、所有者としてのリターンも得られるため、経営に臨む本気度が高いでしょう。

 

また会社に関する意思決定のほとんどを、経営者1人で決められるため、迅速なかじ取りができます。今後の経営に必要と判断すれば、単独で役員報酬・会社分割・定款変更などを決定できるのも特徴です。

 

このように、経営者が会社の意思決定に絶大な権力を持つ状態は、経営者の子どもといった親族への事業承継により、経営者一族内で引き継がれます。

外部経営者を招くメリットと注意点

他社の社長をスカウトしたり、M&Aの買い手の社内の人材が登用されたり、ファンドが経営者を連れてきたりして、所有と経営が一致している会社へ、外部経営者を招くケースもあるでしょう。

 

所有と経営の分離によって、ガバナンスの強化や、資金調達しやすくなるというメリットがあります。しかし所有者と経営者の間に対立が生じやすい点は、注意しなければいけません。

 

経営に携わっていた株主であれば、外部経営者とのやりとりを円滑に行えるでしょう。しかし株主が相続により代替わりすれば、経営経験のない株主がリターンばかりを求め始めるかもしれません。

所有者である株主には、経営者や役員を選出する上での決定権があります。経営者には、株主の意向に沿うような意思決定が求められるかもしれません。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。

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