(写真はイメージです/PIXTA)

成年後見人をつけた場合、その報酬や手続き費用はどの程度と考えておけばよいのでしょうか? 本記事では、成年後見制度の利用にかかる報酬や費用の相場について、相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

「成年後見人」とは?

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判断能力がない常況にある人が自分で財産管理などをしていると、よくわからないままに訪問販売で高額商品を売りつけられてしまうなど、不利益を被る可能性が高いでしょう。また、このような人は、原則として有効に法律行為をすることができません。

 

そのため、たとえばその人が相続人となる相続が発生した場合、財産わけの話し合いである遺産分割協議において、困った事態となってしまいます。遺産分割協議には相続人全員の参加が必要であり、相続人のなかに認知症の人などがいる場合であっても、認知症の人を除外して遺産分割協議を有効に成立させることはできないためです。

 

ほかにも、施設へ入所するための費用を捻出するために本人名義の自宅不動産を売却したり定期預金を解約したりしようにも、本人に判断能力がない以上、不動産の売買契約を有効に成立させたり定期預金を解約したりすることも困難です。

 

このような事態に対応するため、判断能力がないのが通常の状態となってしまった本人に代わって、財産管理や契約行為などを行う「成年後見制度」が設けられています。この役割を担うのが、家庭裁判所で選任された「成年後見人」です。

 

成年後見人には本人の親族が選任されるケースもありますが、後述のように、弁護士や司法書士などの専門家が選任されるケースのほうが多くなっています。

費用を抑えたい…「親族」は成年後見人になれる?

後ほど解説しますが、成年後見人に専門家が選任されると、成年後見人に対して毎月の報酬が発生します。では、その費用を抑えるために、親族が成年後見人となることは可能なのでしょうか?

 

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誰が成年後見人になるかは家庭裁判所が決める

実は、誰を成年後見人とするのかについては、申立人側で最終決定をすることはできません。成年後見制度を利用したい旨の審判を家庭裁判所へ申し立てる際に、成年後見人の候補者を記載することはでき、その候補者を親族とすること自体は可能です。

 

しかし、最終的に誰を成年後見人として選任するかを決めるのは家庭裁判所です。そのため、記載をした候補者が必ずしも選任されるとは限りません。

 

また、希望どおりの親族ではなく、専門家が成年後見人として選任されたからといって、そのことを理由に後見開始の申し立てを取り下げることは認められないことにも注意が必要です。本人に対して成年後見人をつけるべきであると家庭裁判所が判断をした以上、成年後見人を付けないことは本人の福祉に反することであると考えられるためです。

 

選任された成年後見人は7割近くが専門家

厚生労働省が公表している「成年後見制度の現状」(令和4年8月版)によると、令和3年中に選任された成年後見人の内訳は、次のようになっています。

 

親族以外:80.2%(31,719件)

親族(子や兄弟姉妹など):19.8%(7,852件)

 

そして、この「親族以外」のうち、弁護士や司法書士、社会福祉士といった専門家が選任されたのが86.5%(27,441件)となっており、これは全体の約69%にあたります。このことから、親族が成年後見人となるケースが約2割であるのに対し、約7割という多くのケースで専門家が選任されている現状が伺えます。

 

専門家が成年後見人に選任される可能性が特に高いケース

次のようなケースでは、特に専門家が成年後見人として選任される可能性が高いでしょう。

 

■本人の財産が多い場合

本人の財産が多い場合や、本人が複数棟のアパート経営を行っていたなどで財産管理が複雑である場合などには、専門家が成年後見人として選任されるケースが多いでしょう。

 

成年後見人の財産を専門家が横領したなどとしてニュースなどで取り上げられる場合もありますが、実態としては親族による横領のほうが圧倒的に多いとされています。また、近しい親族であればあるほど成年後見人自身の財布と、本人との財布を明確に分けられず、悪気のないまま使い込みをしてしまうケースもあることでしょう。

 

そのため、裁判所としては、多額の財産管理を親族に任せることを避ける傾向にあるといえます。

 

■親族内に適切な人がいない場合

親族内に適任者がいない場合には、専門家が後見人として選任される可能性が高いでしょう。たとえば、本人の居住地の近くに居住している親族が誰もいない場合や、近くに子などがいるにもかかわらず、本人との関係性が悪く成年後見人を引き受ける気がない場合などです。

 

■親族内に争いがある場合

誰を成年後見人とするのかということや財産の管理方法の方針などについて親族内で争いがある場合には、専門家が後見人として選任される可能性が高いでしょう。この場合、親族を成年後見人として選任してしまうと、親族間の関係性がさらに悪化したり、別のトラブルの原因となる可能性もあるためです。

 

成年後見人が親族の場合は「成年後見監督人」がつくことも

仮に親族が成年後見人に選任されたからといって、後見人の報酬がまったく掛からないわけではありません。なぜなら、遺産分割協議が予定されている場合などにおいて、親族が成年後見人となるケースでは、その成年後見人を監督する「成年後見監督人」として、専門家が別途選任される場合もあるためです。この場合には、成年後見監督人に対して月々の報酬が発生します。

 

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