(写真はイメージです/PIXTA)

相続における最低限の取り分である「遺留分」。遺留分の請求には、時効が定められています。期間内に請求しなければ、遺留分を侵害されていても、請求権利が消滅してしまうため注意が必要です。本記事では、遺留分の基本とともに遺留分請求の時効について、相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

「遺留分」とは?

遺留分とは、亡くなった人(=「被相続人」といいます)の子や配偶者など一定の相続人に保証された、相続での最低限の取り分です。はじめに、遺留分の性質について解説していきましょう。

 

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遺留分を侵害した「遺言書」や「生前贈与」も有効

遺留分が一定の相続人に保証されているとはいえ、遺留分を侵害した遺言書や生前贈与が無効になるわけではありません。遺留分を侵害した遺言書や生前贈与も有効です。

 

たとえば、長女と長男の2名が相続人である場合において、長女に全財産を相続させる旨の遺言書を作成したと仮定しましょう。生前贈与などは、一切していないものとします。この遺言書は、明らかに長男の遺留分を侵害しています。

 

しかし、遺留分を侵害していることを理由に、この遺言書が無効となることはありません。この遺言書は、ほかに問題がなければ有効であり、相続が起きたあと、実際にこの遺言書を使ってすべての財産を長女に名義変更することが可能です。

 

遺留分を侵害されたら…「遺留分侵害額請求」で対抗

上記のような遺言書があった場合、遺留分を侵害された長男はどうすればよいのでしょうか? この場合において、長男は、長女に対して「遺留分侵害額請求」をすることができます。

 

遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分に相当する分の金銭を支払うよう、遺言などで財産を多く受け取った人に対して請求することです。この請求がなされると、長女は長男に対して、実際に遺留分相当額の金銭を支払わなければなりません。

 

長女が相続で受け取った財産の大半が不動産や自社株など換金しづらいものである場合、遺留分を払えといわれてもすぐには支払えない場合もあることでしょう。しかし、この場合であっても、支払いが免除されるわけではありません。一括で支払うことができなければ、分割払いや資産現物での支払いなどを交渉することとなります。

 

なお、2019年7月1日の民法改正以前の制度は、遺留分「侵害額」請求ではなく遺留分「減殺」請求でした。現在の遺留分侵害額請求が金銭の請求であることに対し、従前の遺留分減殺請求は、原則として現物の返還を求める制度であった点が大きな違いです。

 

現物の返還であるため、遺留分減殺請求によって、たとえば、不動産が当然に遺留分を請求した人とされた人との共有となる点などが問題となり、改正された経緯があります。

 

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