(※写真はイメージです/PIXTA)

「老いると子どもに返る」といわれますが、素直に子どもに返れる人はそんなに多くありません。経験やプライド、権威、固く凝り固まった脳、不安や心配などが邪魔をするからです。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)で解説します。

普通の暮らしの中に充実した生活がある

■「老いても、認知症になっても元気な人」の特徴

 

「老いると子どもに返る」といわれますが、素直に子どもに返れる人はそんなにいません。経験やプライド、権威、固く凝り固まった脳、不安や心配などが鎧となって、子どものような純な気持ちにはなかなかなれないからです。

 

「どんな人が長生きしますか」「認知症にならないためにはどうしたらいいですか」と質問されることがよくあります。

 

けれども、寿命がいつ来るかは誰にもわかりません。認知症にならない保証はありません。

 

ただ、幸せに老いる方法はあると思っています。

 

老いても、認知症になっても、元気な人はどういう人だろうと考えました。

 

答えは、無邪気で素直な人ではないかと思ったのです。それと、死ぬまで仕事や趣味があって人との交流もある人です。無邪気でやさしい年寄りには人も寄ってきますが、偉ぶって頑固な人は敬遠されてしまいます。

 

漫画家の蛭子能収さんが73歳のときに認知症を発症したそうです。アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の混合ということですが、認知症の本も出版され、元気にされているようです。

 

蛭子さんはテレビタレントとしても活躍されていました。とぼけた感じがあって人気だったので、こう言っては失礼ですが認知症になってもあまり人が変わってしまったと、まわりは思わないかもしれません。

 

そうはいっても、自分がショートステイに泊まったことも忘れているようですし、近時記憶障害はそうとう進んでいるようにみえます。それでも、家族やマネージャーさんの支えで仕事をしています。とてもうらやましい環境です。

 

蛭子さんもまわりの支援にとても感謝していて、特に妻に対しては、若いときは言わなかった感謝の言葉をきちんと言われていて感心しました。

 

蛭子さんのいいところは無邪気なところです。インタビューの中でも、忘れていることを指摘されても、「そーなんだ。そうかもしれない」と思い出そうとしたりして、穏やかな人柄が見えてきます。おそらく、蛭子さんだっていろいろつらいこともあるはずですが、まわりのサポートを受け入れ、自然体で生きていられると思います。

 

蛭子さんには、仕事をしていきたいという意欲もあります。これも元気の源でしょう。

 

蛭子さんのように有名高齢者の紹介をしましたら、「その人たちは、生涯現役でいられる特別な人たちだ」という意見をいただいたことがあります。

 

蛭子さんや、この本でも紹介した認知症研究者の長谷川和夫さん、登山家の三浦雄一郎さん、たしかに特別な才能と仕事を持っている人たちです。

 

でも、生涯現役で生きている人は無名な人たちにこそ多くいらっしゃいます。老いて認知症になれば施設で暮らす、というワンパターンな認識は捨てたほうがいいでしょう。

 

無邪気に自分の人生を楽しんでいる達人は、あなたの身近にもいらっしゃるはずです。

 

生涯現役の主婦、農業者、趣味人などなど、普通の人たちの普通の暮らしの中に充実した生活があります。年をとってくると、だんだんそういうものが見えてくるはずです。

 

見えない方は、まだ無邪気な年寄りになれていないということです。

 

あなたの身近な「無邪気に年をとっている先輩」を目標にしてみてください。

 

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

 

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    本連載は和田秀樹氏の著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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