顧客情報のデータ化で一元管理が可能になるも…まさかの「業務量倍増」に陥った残念なワケ【DX失敗事例】

顧客情報のデータ化で一元管理が可能になるも…まさかの「業務量倍増」に陥った残念なワケ【DX失敗事例】
(※写真はイメージです/PIXTA)

業務のデジタル化によってコスト削減や人的負担の軽減を図るDX。不動産販売事業を経営する中西聖氏も、自社のDXを推進していました。本記事では、中西氏が自社のDXの一環として行った顧客情報のデータ化の失敗体験から、DXによりむしろ業務負担が増えてしまう理由を解説します。

DXで効率化のはずが…残業が増えたワケ

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

ところが、これもうまくいかなかった。キャビネットを減らしてから3カ月ほど経った頃、僕は賃貸管理部門の社員が夜遅くまで残業しているのを目にした。時期的には繁忙期で、そのせいで残業しているのだろうと思ったのだが、実際には違った。

 

残業の理由を知ったのは幹部社員との経営会議だった。残業が多いように見えるが、理由は何か。会社で解決できることはないか。僕は部門長のモリタにそれとなく聞いてみた。

 

するとモリタは顧客情報のデータ化が残業の原因になったという。僕は意味が分からなかった。顧客情報の入力や閲覧を簡単にするために、書類の情報をデータ化したはずだったからだ。

 

モリタによれば、データ化する前と比べて彼らの残業時間は増えたと言う。なぜそんなことが起きるのか。既存の顧客情報はデータ化したが、賃貸物件は入居者が2年ごとに更新するか入れ替わる。そのため賃貸管理部門が扱う顧客情報もアップデートしていかなければならない。

 

従来は契約書を作成し、それをキャビネットに保存しておけばよかった。更新か解約の時期が来たら、その都度キャビネットを開け、顧客情報の書類を見れば手続きができた。それはそれでキャビネットと行ったり来たりする手間が掛かるが、データ化したことによってその状況がさらに複雑になった。

 

更新または解約する顧客情報はデータベースから呼び出すのだが、そのデータに抜けがあったり入力ミスがあったりする。つまり、データ化のプロセスに問題があった。データとしての精度が低いため、そういった部分を確認したり修正したりする手間が増え、負担が増えたというわけだった。

 

これはまったく想定していない問題だった。論理的に考えて、書類が減り、顧客情報をデータとして共有できるようになれば会社も社員もメリットが得られる。

 

しかし、実際にはしわ寄せが起きている。モリタは今にも泣きそうな表情で、データ化は失敗だ、DXは現場のためにならないと訴えている。その姿を見て、僕は何を推進しているのだ、と深く反省することになったのだ。

 

 

中西 聖

プロパティエージェント株式会社

代表

 

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※本連載は、中西聖氏の書籍『DX戦記 ゼロから挑んだ デジタル経営改革ストーリー』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

中西 聖

幻冬舎メディアコンサルティング

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