今回は、狙い通りの民事信託を設計するために押さえておくべきポイントを見ていきます。※本連載は、税理士・公認会計士の成田一正氏監修、一般社団法人民事信託活用支援機構理事長の髙橋倫彦氏、同機構理事の石脇俊司執筆の『『危ない』民事信託の見分け方』(日本法令)の中から一部を抜粋し、資産家の相続対策、資産および事業承継対策としての活用が期待される民事信託について、その特徴や問題点、起こりうるトラブルへの対処法を見ていきます。

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受託者の権限の行使は「合目的的」でなければならない

前回に引き続き、民事信託の仕組みの設計について見ていきます。

 

③受託者等の裁量権

民事信託では、受託者に広範な裁量権を与えることが多いです。受益者の選定、信託給付の額、信託給付の時期等に関する裁量権、信託契約の内容の変更権等です。これらの権限の行使は、信託目的に照らして合目的的でなければなりません。受託者以外の者が指図権者としてこのような権限を有する場合も同様です。

 

例えば、受益者指名権、株主総会における受託者の議決権行使の指図権、投資運用の指図権、信託の変更権等を持つものは、受認者(fiduciary)としての高度な忠実義務を負い、善良なる管理者の注意義務があります。

 

また、指図権者の権限は、通常は指図権者の死亡により消滅し、承継されません(信託法第89条第5項)。指図権者については信託法に規定がありません。信託業法に忠実義務および行為準則の定めがあります(信託業法第65条、第66条)が、この業務に対する参入規制はありません。

受託者による信託財産の運用には、専門家の助言が必要

④信託財産の運用方法

商事信託では、信託財産の運用に関するガイドラインを定め、これを遵守する限り、結果としての運用責任は問われない仕組みにしています。また、運用理論が進化し、モダン・ポートフォリオ理論の下においては、個々の投資銘柄の成否ではなく、ポートフォリオ全体の成果が問われることになっています。しかし、民事信託ではガイドラインを設定していないことが多く、受託者は運用に関する知識と経験が乏しいことが多いため、必要に応じて運用の専門家の助言が期待されます。

 

⑤後継受託者の選定

民事信託の受託者は、通常は自然人ですから、あらかじめその後継者を定めておくことが望ましいといえます。委託者の家族の中に後継受託者の候補がいない場合は、信託銀行等の法人をその候補に指定しておきます。受益者指定権者、議決権指図権者、ポートフォリオ運用の指図権者等の指図権者についても、後継者候補を指名しておいたほうがよいでしょう。また、指名された候補者が、承継時点においてこれを引き受けるとは限りませんので、複数を指名しておくことが望ましいでしょう。

 

⑥承継受益者の指定

受益者連続信託等の長期の信託において、前受益者の死亡等による承継時点が到来した際に、あらかじめ指名された承継受益者が死亡している危険があります。また、事業承継では、あらかじめ後継者に指定された者が期待された事業経営の能力や資格要件を満たさない場合があります。このような危険または場合に備えて、代替の受益者または後継者候補を指名しておくことが賢明です。

 

⑦信託監督人の選定

信託監督人は、受益者のために自己の名をもって受託者の監督のための受益者の権利に関する一切の権限を有します(信託法第132条)。受益者が未成年者や高齢者である場合等では、受益者が受託者を十分に監督することが難しいため、信託監督人を選任します。信託監督人には、できれば専門家を選任し、受託者に適正な信託の運営を行うよう監督させます。なお、信託監督人には報酬を支払うことができます(信託法第137条において準用する信託法第127条第3項)。

 

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本連載は、2016年4月1日刊行の書籍『『危ない』民事信託の見分け方』から抜粋したものです。その後の法改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「危ない」民事信託の見分け方

「危ない」民事信託の見分け方

成田 一正 監修 髙橋 倫彦、石脇 俊司 著

日本法令

民事信託は、相続対策、資産および事業承継対策として、今後大いにその活用が期待されている。 一方、民事信託は当事者が家族や身内の者になる信託であるため、受託者の業務が安易に流れ、信託法が定める忠実義務や分別管理義…

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