
今回は、税務上の注意が必要な民事信託の「種類」ごとの課税について説明します。※本連載は、税理士・公認会計士の成田一正氏監修、一般社団法人民事信託活用支援機構理事長の髙橋倫彦氏、同機構理事の石脇俊司執筆の『『危ない』民事信託の見分け方』(日本法令)の中から一部を抜粋し、資産家の相続対策、資産および事業承継対策としての活用が期待される民事信託について、その特徴や問題点、起こりうるトラブルへの対処法を見ていきます。
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委託者の死亡時に相続税が課税される「遺言代用信託」
(2)民事信託の種類別の課税
以下、税務上注意すべき信託の種類ごとの課税について述べます。
①遺言代用信託
委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する定めのある信託、または委託者の死亡の時以後に、受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託を遺言代用信託といいます(信託法第90条第1項)。
この信託の委託者死亡前の受益者や帰属権利者(信託法第182条第1項第2号)は、受益者としての権利を現に有する者に含まれませんので、信託の設定時には贈与税が課税されませんが、委託者の死亡の時に相続税が課税されます。
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②受益権複層化信託
委託者が、その妻と子に一定の割合により受益権を贈与した場合は、その妻と子は、均質の受益権を有し、信託財産に属する資産および負債をそれぞれの持分割合で共有するとみなすことができます。
これに対して、受益権を収益の受益権と元本の受益権とに分割し、その妻に収益の受益権を、子に元本の受益権を贈与した場合は、その妻と子では受益権の質が異なりますので、信託財産に属する資産および負債を、いわば単層ではなく、複層的に合有することになります。このような信託を受益権複層化信託といいます。
この信託が終了した際に、収益の受益権は消滅し、元本の受益者は、信託財産を受領します。この信託は変更不能でなければなりません。元本の受益権は行使の時期が信託の満期ですが、受益権の効力は受益権の贈与時から有効です。特段の停止条件が付されていなければ、元本の受益者は贈与時に受益者としての権利を現に有する者に含まれますので、直ちに贈与税が課税されます。
元本の受益権の贈与税評価額は、信託財産の評価額から収益の受益権の評価額を差し引いて算出されます。
「受益者連続型信託」の税務は税務署への相談が安心
③受益者連続型信託
受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する定めのある信託(信託法第91条)、受益者指名権者による受益者の指定・変更が行われる定めのある信託(信託法第89条)、一定の事由の発生により受益権が移転する定めのある信託、およびこれら信託に類するものを「受益者連続型信託」といいます(相続税法第9条の3第1項)。この種類の信託では、信託契約の定めにより受益者が連続して受益権を取得します。
このような信託の権利の価格の評価には特例があります。すなわち、その権利に、収益に関する権利が含まれる場合は、利益を受ける期間の制限等の制約は付されていないものとみなして、権利の額を計算することとされます(相続税法第9条の3第1項)。
信託財産から得られる収益を、期間の制限等を受けずに、永遠に受け取ることができるということは、信託財産を有しているのと等しいことになります。そこで、ある受益者が収益受益権の全部を有している場合は、その収益受益権の評価額が信託財産の全部の評価額となります。元本受益権の評価額は信託財産の評価額から収益受益権の評価額を差し引いて算出しますから、この場合の元本受益権の評価額は零となります(相続税基本通達9の3-1)。ただし、法人が収益の受益権を有する場合はこの特例は適用されません。(相続税法第9条の3第1項但し書き)。
この信託の承継受益者は、信託の効力が生じた時に指定されていますが、既存の受益者が死亡し、その受益権が消滅した時に、新たに受益権を取得しますので、指定された時点では受益者としての権利を現に有する者に該当しません。なお、受益者連続型信託の税務の取扱いについては、必ずしも明瞭でありませんので、個別事案については税務署に相談することが望ましいでしょう。
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