
44歳サラリーマン、長年の努力が報われた瞬間
大手メーカーに勤める山下英資さん(仮名・44歳)は、長年目標としていた課長昇進を果たしました。数十人いた同期は、今では3分の1くらい。残っている同期は次々と昇進していくなか、焦りのようなものを感じていたといいます。
それでも40代半ば、まさに働き盛りの年齢。長年の努力と実績が認められた瞬間でした。
昇進については、妻の恵美さん(仮名・42歳)も心から喜んでくれました。夫婦で話し合い、今は子育てに専念してくれている妻。仕事に専念できているのは恵美さんのおかげ。だからこそ、早くキャリアアップを果たし、妻を喜ばせたいと考えていたのです。
また家計を支える英資さんの昇進は、家族の将来を左右する大きな出来事です。昇進によって経済的な余裕が生まれることを期待し、これまで少し我慢していた旅行や趣味など、将来の計画を具体的に思い描いていました。
期待と現実のギャップ
課長に昇進し、10名ほどの部下をもつようになった英資さん。先輩からは「上からも下からも挟まれて大変だぞ」と脅されていましたが、まさにその通り。業務量も残業時間も驚くほど増えました。
その苦労は給与にきちんと反映。月収はそれまで47万円ほどでしたが、3割アップの61万円に。年収も1,000万円を超えるのは確実でした。
【企業規模別・課長の平均給与】
企業規模計…月収50.0万円、年収815.4万円
従業員1,000人以上…月収59.7万円、年収1,016.4万円
従業員100~999人…月収47.7万円、年収769.4万円
従業員10~99人…月収41.4万円、年収631.7万円
出所:厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』
そして、その月の25日。昇進後、初めての給料日がやってきました。「恵美も喜んでくれるだろうか」と、久々に早めの帰宅。早速明細をみせたところ、英資さんが予想していたような反応ではなかったといいます。
――(昇進したら、もっと給料が上がると思っていた……)
言葉にならずとも、思っていることは顔にはっきりと出ていました。そして夫婦の間に、重苦しい空気が流れたといいます。