(※写真はイメージです/PIXTA)

たとえば仕事上のやりとりをしているとき、同じような場面で同じようなやりとりをしていても、相手によって仕事の出来・不出来や、やりやすさ・やりにくさが出てくるのはなぜでしょうか。その違いは、感情的なレベルでの信頼関係のあるなしで生じていると指摘するのは、明治大学文学部教授の齋藤孝氏です。著書『究極 会話の全技術』(KADOKAWA)から、コミュニケーションにおいて大切なことについて詳しく解説します。

コミュニケーション力をアップさせるには、今話を聞いているという気持ちで本を読もう

実社会でいろいろな人を意識的に観察し、そこから学ぶことでも、コミュニケーション力をアップさせることが可能です。さらに、ある「コツ」をつかめば、本を読むときにもコミュニケーション力をアップさせることができます。

 

その「コツ」とは、ただ読むのではなく、「意識して読む」ことです。それによってあなたのコミュニケーション力は劇的に変わるでしょう。

 

100年前、あるいは1,000年前に亡くなった人間の本でも、今、その作者が目の前にいるのだと思って、聞くように読むと、よりリアルに感じられるようになり、血肉になっていきます。

 

「読んでいるのではない。聞いているんだ」と想像しながら読むことが大事なのです。

 

とくに聖書や仏典、論語などは、そもそもキリストやブッダ、孔子が話した言葉を弟子たちがまとめたものです。だからこそ、聞くように読むことによって、よりパワーを感じることができるでしょう。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

ゲーテと交流のあったエッカーマンが記した『ゲーテとの対話』を例に

具体的な例を挙げてみましょう。エッカーマンが残した『ゲーテとの対話』は、まさに聞くように読みたい一冊です。同書は、晩年のゲーテと深い交流をもったエッカーマンが、ゲーテとの対話を事細かに記録したもので、いかにも、ゲーテが話してくれているという感じで読むことができます。たとえば、次のような内容です。

 

ときには、死について考えてみないわけにいかない。死を考えても、私は泰然自若としていられる。なぜなら、われわれの精神は、絶対に滅びることのない存在であり、永遠から永遠に向かってたえず活動していくものだとかたく確信しているからだ。それは、太陽と似ており、太陽も、地上にいるわれわれの目には、沈んでいくように見えても、実は、けっして沈むことなく、いつも輝きつづけているのだからね。
(『ゲーテとの対話上』山下肇訳・岩波文庫より)

 

この本を読んでいくと、「ほうほう、ゲーテはエッカーマンを私たち人類を代表する聞き役にして、私たち人類に叡智のプレゼントをしてくれたのだな」と思えること請け合いです。

 

そして、本を読みながらそういう「聞く構え」を身につけておくと、普通の人の話を聞くときにも、ちょっと深く聞くということができるようになり、より高いコミュニケーション力を養っていけるようになるのです。

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本連載は、齋藤 孝氏の著書『究極 会話の全技術』(KADOKAWA)から一部を抜粋し、再構成したものです。

究極 会話の全技術

究極 会話の全技術

齋藤 孝

KADOKAWA

「伝える力」が重要な リモートワーク時代に役立つ 最強メソッド! 最短でコミュニケーションの達人になる「齋藤メソッド」の集大成。 早く、短く、誤解のない説明につながる読書法・メモは図式化して相手の話を正しく早く理…

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