解雇基準の明確化
また、解雇を明確化し、企業にとって雇用が弾力的となるように、その雇用調整コストを低くする必要があります。
解雇規制は雇用主がその労働者を自由に解雇することを制限するもので、具体的には解雇時の割増退職金や解雇に関する手続き等の規制などがあげられます。
解雇規制は解雇を抑制することで、雇用者の雇用不安を和らげる効果があり、労働者にセーフティーネットを提供します。しかし、解雇規制が厳しすぎると、企業は採用に慎重になり、新規雇用が抑制されることがあります。
実際、多くの実証研究が、解雇規制の厳格化が雇用の創出や消失の両方を減少させ、労働市場の流動性を低くすることを明らかにしています。また、雇用保護が強すぎると、起業家精神やベンチャー創業にマイナスの影響を与えるという指摘もあります1。
1 OECD. 2020. OECD Employment Outlook 2020: Worker Security and the COVID-19 Crisis, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/1686c758-en.
日本の解雇規制は国際的にみて厳しいものなのでしょうか? OECDは、解雇に関する規制や市場慣行の厳格さの程度を数値化した「雇用保護指標」を公表しています。それによれば、日本における労働者の雇用保護は決して高いものではありません。
ただし、日本には「整理解雇の4要件」と呼ばれるものがあり、現実的に解雇を厳しいものにしています。
すなわち、日本では法律上は「解雇自由」が原則となっていますが、経営不振など会社側の都合で雇用者を解雇する際には、以下の4つの条件が課されており、これらのうちひとつでも満たさないと、解雇権の濫用として無効になります。
【整理解雇の4条件】
1. どうしても人員整理を行わなければいけない経営上の理由があること
2. 希望退職者の募集、出向・配置転換など解雇を回避するためにあらゆる努力をしていること
3. 解雇の人選基準が合理的かつ公平であること
4. 解雇手続きが妥当であること
企業としては、業績が悪化して雇用調整をしたとしても、将来を考えれば新規の採用も行いたいというのは当然です。しかし、新規採用は、上記の2番目の条件に引っかかってしまうため、日本では経済が長期停滞するなか、若者が採用されない事態が発生しました。
いったん雇用すると簡単に解雇できないとなると、とりわけ将来の見通しが明るくない状況で、企業は新規採用に対して慎重になり、結果として雇用が縮小してしまいます。企業経営が厳しいときには、解雇予告期間を置いたうえで退職割増金を支払ったり、転職支援を行ったりしたうえで解雇ができるよう検討する必要があります。
また、解雇の金銭保障は実現すべきでしょう。会社都合の解雇が厳格に規制されているため、労働市場の流動化を妨げているだけではなく、労働者を自己都合退職に追い込む陰湿なケースも少なくありません。
解雇を明確にして、意欲と能力のある若者が活躍できるようにするべきです。雇用の固定化は、雇用全体を縮小させ、結果的に労働者が不利益を被ることになります。