(※写真はイメージです/PIXTA)

現代人を取り巻くコミュニケーションは、メディアの発達によりかつてとは比べものにならないほど変化しています。以前より判断を急ぐようになったのです。その結果、「スピード」こそが相手に対する「誠意」になってきていると指摘する、明治大学文学部教授の齋藤孝氏が著書『究極 会話の全技術』(KADOKAWA)から、コミュニケーション力を磨く方法を解説します。

社会人のコミュニケーションは正確さとスピードが何より求められる

気心の知れた友人どうしや家族とのコミュニケーションでは、厳密な言葉遣いは求められません。内容的にも、ある程度適当なことを言っても許されるでしょう。

 

お互いの性格や状況があらかじめインプットされていますから、あいまいな発言でも、おおよその意味や感情は通じるからです。

 

しかし、公的な場での社会人の発言となるとそうはいきません。ビジネスにおける会話において、発言者の人柄やプライベートな状況などは、聞き手にはまったく関係ありません。そんなことはまったく考慮されずに、所属する組織を代表する言葉として受け取られてしまうのです。

 

つまり、社会人におけるコミュニケーションは、個人対個人のものではないのです。組織を背負った人間としてコミュニケーションすることになりますから、より正確であることが要求されるのです。

 

ですから、いい加減な発言を繰り返し、話す内容が二転三転したり、約束したことが守れなかったりすると、たちまち「あの人の言うことはいい加減だ」「あてにならない」と、社会的信用を失ってしまいます。

 

それも、本人が信用を失うだけではありません。その人が所属している部署が信用を失い、ひいては組織全体の信用にも影響を及ぼしてしまうのです。

 

また、コミュニケーションでもう一つ大事なのは、スピードです。

 

現代では、たとえばメールでやりとりしていて、返事が一週間滞ると、その件はもうなかったことになるということが少なくありません。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

私は仕事柄、テレビのインタビューの依頼がよくあります。なにかしらニュースがあったときに、識者として意見を求められるのです。そのような仕事の場合、数時間の間に返事をしないとその仕事はなくなっていきます。

 

それは少々極端な例だと思われるかもしれません。たしかに、仕事自体がなくなるという例はめったにないでしょう。しかし、ほとんどのメールは(とくに仕事がらみのメールは)すぐに返信する必要があります。現代社会では誰もが、判断を急いでいるのです。

 

その結果、現代社会では、仕事における「誠意」の意味が変わってきています。スピードこそが相手に対する誠意になってきているのです。

 

私の大学時代の友人は、社会に出て活躍している人がほとんどですが、彼らにプライベートの用事でメールをすると、即座に返事が集まってきます。

 

私など、レスポンスが一番遅いほうなのですが、それでもやはり、とりあえずちゃんと返答だけはしておくようにしています。それによって人間関係がつながっていくことを実感しているからです。

 

また、コミュニケーションにおける「スピード」とは、レスポンスの早さだけではありません。用件のみを手短に伝える能力も、「スピード」あるコミュニケーションでは大事になってきます。

コミュニケーションの正確さとスピードを磨く方法

では、具体的にどんなコミュニケーションを目指せばいいのでしょうか。

 

まず、スパッと「こういうふうになっております」と、手短に大筋を説明できる力を磨くべきです。

 

そのうえで、「今、要求されていることはこれです」とか「今、決断していただきたいのはこの件です」などと意見を求める点をはっきりと言うのです。それは決して不躾(ぶしつけ)ではありません。むしろそれこそが「誠意」ある姿勢になっているのです。

 

たとえば私は、大学での講義や社会人向けのセミナーで、「15秒」で用件を伝える練習をしてもらっています。

 

ストップウォッチを使って正確に計りながら行うと、最初の頃は、みな重要ではないことを話すだけで15秒経ってしまいます。しかし何度か繰り返すと、みるみるうちに、早く、正確に、わかりやすく、用件を伝えられるようになっていきます。

 

用件のみを手短に伝える能力は、比較的簡単に鍛えられます。ぜひ、毎日の仕事の中でも15秒を意識してみてください。

 

齋藤 孝

明治大学文学部教授

 

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※ 本連載は、齋藤孝氏の著書『究極 会話の全技術』(KADOKAWA)から一部を抜粋し、再構成したものです

究極 会話の全技術

究極 会話の全技術

齋藤 孝

KADOKAWA

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