「3つの支出」に備える際に押さえておきたいポイント
この3つの支出は、それをまかなうための財源とセットで考えると非常に合理的です。
3つの使いみちに合わせて、お金の出どころも3つに分け、それぞれをリンクさせておくのです。これは、「定年後のお金の三分法」という考え方です。
まず、「日常生活費」は、何があっても死ぬまで必要なお金です。だとすれば、死ぬまで支給されるお金=公的年金でまかなうというのが自然です。
企業年金があるという人は、それにプラスαとして使ってもいいと思います。しかし、企業年金はもらえる期間が決まっています。途中でなくなることを考えれば、公的年金の範囲内に生活費を収めたほうが賢明でしょう。
次に、「自己実現費・一時出費」は、おもに楽しみに使うお金です。これは、60歳以降に働いて得られる収入でまかなうのがいいでしょう。
そうすれば、その分は貯えておく必要がありません。また、将来、病気で働けなくなり、労働収入がゼロになったとしてもまったく困りません。なぜなら、体が悪くなれば、遊ぶお金は必要がなくなるからです。
たとえば、定年後の収入が月10万円だとすると、1年で120万円になります。これだけあれば、年に数回旅行することや、少し贅沢(ぜいたく)な外食を楽しむこともできるでしょう。
生活のために働くのはストレスになりますが、「楽しむためにお金を稼ぐ」と思えば、仕事に対するモチベーションも上がるというものです。
最後に、悩ましいのが「不確定支出」です。おもに医療・介護・施設入居といった高齢期に起こりうるリスクに備えるお金を想定しています。これは、いつ、いくら必要になるかわかりません。もしかしたら、ピンピンコロリで亡くなってしまい、費用が一切かからないということもありえます。
こうした不確実なお金こそ、退職金や金融資産といった「確実にあるお金」でまかなうのが安心です。退職金を取り崩さずにとっておくのは、医療費や介護費への備えなのです。