ほぼすべての日本人がおびえる老後不安・年金不安は「まぼろし」だった!
会社員として長く働いてきた人にとって、定年は人生後半の大きなターニングポイントです。しかし、定年まであと数年というところまできても「何を準備していいかわからない」という人は意外と多いのです。
「老後資金は足りるのか」「年金だけで生活費はまかなえるのか」「医療費や介護費もかさみそうだ」と、頭に浮かぶのは不安ばかり。
世の中には、こうした「老後不安」「年金不安」を煽あおるような情報があふれています。気持ちの焦りから「儲かる投資術」といった本につい手を伸ばしたくなる気持ちもわからないではありません。しかし、ちょっと待ってください。その「老後不安」や「年金不安」は、本当に存在するのでしょうか。
◆老後不安の正体は「わかっていない」こと
たとえば、「老後資金2,000万円問題」のようなインパクトのある情報は、記憶に残りやすいものです。しかし、それを鵜吞(うの)みにして「不安だ、不安だ」とうろたえるのは、正体のない幽霊におびえるようなもの。
「老後不安」などというものは、まったくいわれのないまぼろしです。
振り返ると、「老後資金2,000万円問題」の発端は、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループの報告書でした。その中で高齢夫婦無職世帯は毎月の支出に対して、収入が平均約5.5万円不足しているというデータが紹介されました。
その赤字額を単純計算すると「老後20~30年で不足総額が1,300万~2,000万円になる」というコメントが物議をかもす原因となったのです。実際は、この年(2017年)の高齢夫婦無職世帯には平均で約2,500万円の貯蓄があり、資金不足というわけではありませんでした。
また、この統計は毎年取られていますが、最新の2021年版では、毎月の不足額は約1.9万円です。この数字で計算すると「老後資金690万円問題」になってしまいます。いかがですか? 統計で示されるデータは、毎年変わるうえに平均値にすぎません。
定年後のお金について考えるとき、もっとも大切なのは平均値ではなく、「自分の場合はどうなのか」ということです。これがわからないと、いくら老後資金を貯めても「これで足りるのか?」という不安から解放されることがないからです。
一般的に老後不安に陥っている人は、老後の収入の中心となる「年金」すら自分が「いつからいくらもらえるのか」をわかっていない人が多いようです。それどころか、「年金はあてにならない」と思い込んでいる人のなんと多いことか。
年金は、現役世代が年金受給者を支えるしくみになっているため、「少子高齢化が進めば年金が減るのは当たり前」といった風潮があります。しかし、これこそが最大の誤解です。