(※写真はイメージです/PIXTA)

一国一城の主といえば、会社勤めの息苦しさから解放され、頑張った分だけ利益が得られる理想に満ちた働き方です。一方で、うまくいかなった場合には、顧客に迷惑をかけ、自身も大きな責任を背負うリスクも背中合わせ。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、個人事業主の業績不振による会社清算について、北條将人弁護士に解説していただきました。

「回数券」と「通帳の差し押さえ」について

またそのような行為は免責不許可事由といって、最終的に負債を免れることができなくなるおそれもあります。このケースでは、回数券を買っていただいた患者さんも債権者であり、その回数券を払い戻すようなことも返済に当たりうるので、破産を念頭に置いた場合には避けるべき行為といえるでしょう。

 

通帳の差し押さえの件ですが、個人事業主の場合には個人とは別の法人格はないので、事業で負った借金はあくまでも個人の借金であり、個人の通帳が差し押さえを受けることはあります。

 

一方、法人格のある企業の場合、法人名義で負った負債はあくまで法人のものであり、この負債により当然には個人の通帳等の資産が差し押さえられることはありません。

 

ただし、中小企業の場合、法人の負債については代表者も連帯保証していることが多く、かつ経営状態が悪化している会社の場合には代表者個人名義でも多額の借り入れをしているケースが多いので、破産をする場合は、会社とその代表者をセットで破産させるケースが大半です。

 

破産以外の清算手段としては、負債を一定の割合までカットした上で弁済計画を立案し、これに基づいて返済することで事業を継続させる「民事再生」(個人の場合は個人再生といいます)や、裁判所を通さず個々の債権者と協議をして返済計画を立てていく「任意整理」があります。

 

ただ、これらはいずれにせよ返済の目途がたつ前提での手続きですので、いつまでも経費が売り上げを上回り、利益が出る可能性の乏しい事業の場合は、やはり破産を選択すべきということになります。

 破産は『誠実な債務者』を救済する制度

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

以上のとおり、破産を必要以上に恐れ、あるいは忌避することはありませんが、一方で「破産をすれば必ず借金がチャラになる」などと軽く考えてもいけません。

 

厳密に言うと「破産」とは債務者の負債や資産状況を調査し、お金に換えられるものがあれば換えた上で債権者に平等に配当する、という手続きのことです。「借金をチャラにする」ためには、これとは別に、裁判所から免責許可決定というものを受ける必要があります。

 

この点で、少し触れましたが「免責不許可事由」といって、免責を受けられないような事情が破産法に列挙されています。

 

例えば、ギャンブル、高額な飲食などの浪費といった事情はこれに該当します。また上記のような不平等な弁済や財産隠し、氏名や負債の状況などを偽っての借り入れ、不当な財産処分(不当に廉価での財産処分や、カードで購入したものをすぐに質入れするような行為)などがこれに該当します。

 

破産が債権者の不利益と引き換えに債務者を経済的に更生させる制度である以上、債務者には誠実さが求められているということです。

 

ただ、上記のような事情があっても場合によっては免責を受けられる可能性があります。その際は弁護士とよくご相談されて、破産を申し立てるかどうかご判断いただきたいと思います。

 

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