プロテインを減らし、サプリは禁止で…
■血液検査の値がヤバい
大腸ガンの手術後、毎月、血液検査のために大学病院に通っている。CT検査もしばらくは4ヵ月に1度、最近は半年に1度ある。丘の上に建つ大学病院の建物を見ると、日常のなかで忘れがちになる手術の日のことを、いやでも思い出す。調子づいているノンキな気分が、ちょっとだけリセットされる。といって、幸い今のところ、先生とは毎度のバカ話で済んできたので緊張感もない。
が、ある日「んっ?」とK先生が真顔になった。
「腎臓と肝臓の数値がちょっと悪いですね〜」
実はこの月、思い当たる原因が山ほどあった。まず久しぶりに週2回という深酒の打ち合わせ。東京にも何度か往復した。なんだかわからぬサプリも大量摂取中である。そのくせトレーニングは休まなかったから体のなかも外も過労気味。
「トレーニング追い込み過ぎてるもんで。あとサプリとか……」
医師というのは巷にはびこる各種サプリには冷ややかだ。まぁこれは当然で、近代医学自体がエビデンスの積み重ねと絶え間ない修正・訂正で発展してきたのだから、医学的な確証もないことはそうそう受け入れがたい。科学的であるとはそういうことだ。
各種ビタミン剤と一緒で純粋成分だけを取り出すと、過剰摂取につながって危険というのも確かだ。同じ成分を摂るのでも、食物とサプリでは小腸での吸収速度も異なるという。日本医師会のHPには、ちゃんとこんなふうにも書いてある。
「『健康食品』には、成分を濃縮していたり、医薬品の成分を含んでいたりするものも多くあります。効果を期待して摂り過ぎたりすると、危険性も増します。また、服用している医薬品との相互作用で、思わぬ健康被害が発生することもありえます」
はいはい。ごもっとも。しかし、たとえばプロテインだ。過剰摂取かどうかという量の問題はさておき、世間では人工的なものはよくないという風潮がある。
だが、ヨーグルトやチーズを手作りしたことがあればわかるだろうが、牛乳に乳酸菌を入れて固め、取り出したものがヨーグルト、残りがホエイ(乳清)。
あるいは牛乳にお酢を加えて少し加熱し塊を取り出せばカテージチーズ。残りがホエイ。多分、ホエイなんて今までは処分に困って捨てていた。このホエイのタンパク分を分離粉末にしたのがホエイプロテインだ。粉末プロテインなんて、作りが単純過ぎてそうそう体に毒なものができるとも思えない。
逆に、タンパク質を粉末のプロテインではなくトレーニーご愛用の鶏胸肉だけで摂るのはどうか。よほどの高級地鶏でも選ばぬ限り、ケージ飼いの鶏は飼料に抗生物質もたっぷり混入されているはずだ。鶏胸肉を摂ることで抗生物質も体に取り込むことになる。
魚はどうか。高タンパク低脂肪のマグロなどの大型魚の水銀問題も気にしだしたらきりはない。そう考えると粉末プロテインだけが際だって害とも思えない。せいぜい、タンパク質の種類は偏らないように肉、魚、卵、牛乳、大豆、ここにプロテインを加えて摂るというのがいちばんの選択肢かもしれない。
とあれK先生、少し嬉しそうにこう言った。「サプリとか、当面は禁止ですね。トレーニングも無理は禁物」。でもねぇ……無理しないと筋肉育たないんだよなぁ。
■還暦トレーニーならではのジレンマ
体の内も外も、そろそろガタがきだした還暦トレーニーと若いトレーニーとのいちばんの違いは、胃なら消化能力、肝臓・腎臓なら解毒能力、膵臓ならインシュリンの分泌能力もろもろ、加齢によって低下していることだ。
たとえば、プロテインひとつとっても、若ければ多少の過剰摂取もまったく問題もないだろうが、歳をとるとタンパク質の取り過ぎは腎臓に負担をかける。わかっていても筋肉はタンパク質を欲しがるから、どこかで折り合いを付けねばならない。
通常、腎臓の数値が悪くなるとまず減塩がすすめられ、この段階を過ぎると次にタンパク質が制限される。これは困るのでなんとか減塩で済む段階で踏みとどまりたい。私が調理のときに塩麹にこだわるのも、塩麹なら塩や醤油を使うより塩分摂取量が減り、麹の効果でうま味が加わり、肉ならつけ込むことで素材も柔らかくなるためだ。
さて、先に述べた肝臓、腎臓の数値はどうなったか。プロテインの量を減らし、各種サプリをピタリとやめたら翌月の血液検査ではすべて正常値に戻った。戻ったのでまた少しずつ増やし、ただ今、限界摂取量を模索中だ。
城 アラキ
漫画原作家
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