労働需給ひっ迫のなか、賃金上昇率は「減速」
労働者のバーゲニングパワーは健在である。自発的離職者は高水準、企業、特に中小企業の求人未充足率は高水準で高給を求めての労働者のJob hoppingが旺盛である。
こうした労働需給ひっ迫の下で賃金上昇率が減速、格差も縮小していることも、常識に反している。
1月のAHE(平均時給)は前月比0.3%と昨年1月の0.7%から半減している。コロナ禍の下での異常な労働需給ひっ迫が引き起こした、トラック運転手やウェイター、ウェイトレスなど接客業での人手不足は緩和に向かい、非熟練、低賃金分野の賃金上昇率は鈍り始めている。
また高給セクターの金融や情報部門での雇用の伸びが低いことも全体の賃金水準の伸びを引き下げている。
1月の週平均労働時間は34.7時間と、過去半年のレンジ(34.4~34.6時間)を上回った。雇用数の増加と労働時間の相乗効果により1月の生産活動は大きく増加していると示唆される。
他方で雇用コスト指数は低下している。生産性の伸びと賃金上昇率低下が進行する、まさに出来すぎの労働市場であるが、なぜこんなことが起きているのか。
“出来すぎの労働市場”の原因は「NAIRUの低下」か
明らかに労働市場が弾力的に動き、資源配分を采配しているといえよう。より具体的には、NAIRU(インフレを加速させない失業率)が低下している可能性である。
労働市場ではインターネットによって求人と求職のマッチングが瞬時にできるようになった。またよりフェアな労働賃金決定が可能になっている。スキルアップによるジョブシフトが給与増+生産性上昇を引き起こしているかもしれない。
労働者は容易にスキルにあった職を探し当てることができ、平均失業期間は2023年1月は9.1週と、コロナ前2019年の9.3週を下回っている。
NAIRUが低下しているとすれば、それは労働力供給余力を意味し、生産増加の一方で賃金が抑制される環境にあるのかもしれない。
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