(写真はイメージです/PIXTA)

現在、米国では労働市場・金融市場ともに常識では説明のつかない「好都合すぎる現象」が頻発していると、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏はいいます。いま、米国市場でなにが起こっているのでしょうか。この「謎」の正体と今後の米国経済の展望を探っていきます。

多発している米国経済の“好都合すぎる謎”

いまの米国経済をどのように捉えたらいいのだろうか、常識的解釈では説明がつかない、好都合な謎が多発している。労働市場は1年以上にわたる金融引き締め、ハイテク大企業のレイオフ続出にもかかわらず、活況が続いている。

 

さらに不思議なことに、旺盛な労働需給の下で賃金上昇率が低下し始めた。また、金融市場でも1年間で8回、累計4.5%の利上げにもかかわらず、潤沢な投資資金が健在で、新興国株式や米国の低格付けクレジットを押し上げている。

 

なぜこのような好都合な事象が頻発しているのか、この謎は一時的なもので、景気悪化が深刻になる過程で消えていくものなのか、それとも持続し米国経済を支え続けるのか。

絶好調の米国労働市場

1月の雇用統計はほぼすべてのエコノミストにとってサプライズであった。雇用が絶好調で、失業率は3.4%と53年ぶりの水準まで低下した。雇用増加数は51.7万人と予想を大幅に上回り、2022年8月以降の26~35万人台の増加トレンドから加速しているともみられる強さである。

 

雇用はほぼ全産業にわたって増加(利上げにより住宅着工が落ち込んでいる建設部門でも増加)している。歴史的利上げ、大手ハイテク企業中心にレイオフの発表が相次いでいるなかでのこの労働市場の好調さは、尋常ではない。

 

[図表1]53年ぶりの低失業率とNAIRU/[図表2]セクター別雇用者数の増減
[図表1]53年ぶりの低失業率とNAIRU/[図表2]セクター別雇用者数の増減

 

ここ数ヵ月間のレイオフ発表はざっと挙げただけでも

 

・アルファベット(12,000人、6%削減)
・アマゾン(18,000人以上)
・デル(6,600人、5%削減)
・IBM(3,900人、1.4%削減)
・マイクロソフト(11,000人、5%削減)
・セールスフォース(10%削減)
・Zoom(1,300人、15%削減)
・PayPal(2,000人、7%削減)
・BNYメロン(1,500人、3%削減)
・ゴールドマンサックス(3,200人)
・ダウ(2,000人削減)
・3M(2,500人削減)

 

……ハイテク大企業で軒並みである。

 

しかし企業の求人意欲は強く、利上げにより住宅着工が落ち込んでいる建設部門を始め、ほぼすべてのセクターで雇用が増加している。大企業に押されて雇用が進まなかった中小企業は、このリストラをチャンスと捉えている向きもある。旺盛な消費が広範な雇用機会をもたらすという好循環は損なわれていない。

 

1990年代前半のBPR (ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)革命のときは、機械に置き換えられたホワイトカラーが失業し、労働市場が不振のままのジョブレス・リカバリーが続いた局面があったが、当時とは雲泥の違いがある。

 

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※本記事は、武者リサーチが2023年2月14日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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