日本人の死因はほとんどが病死、老衰は「約4%」
日本人の死因から見ても、不慮の事故や自殺、老衰を除くと88.7パーセントの人が病死していることがわかります(厚生労働省「平成23年主な死因別死亡数の割合」)。老衰は4.2パーセントにすぎず、約9割もの人が病死していることになります。
【図表1 日本人の死因】
機械でも長く使っていれば部品が摩耗したり不具合が生じ、最終的には壊れて動かなくなります。ましてや生身の人間の体は、身体的な消耗だけではなく、精神的なストレスも加わってきますので、寿命が延びればそれだけ不具合も起こりやすくなります。
その筆頭となる病気が、ご存じのように「がん」です。常に死因のトップに君臨し続け、今や2人に1人がかかり、3人に1人が命を落としている状況にあります。次に多いのが「心疾患」、そして「肺炎」「脳血管疾患」と続きます。
平成22年までは、がん、心疾患、脳血管疾患が3大死因でした。しかし、高齢化が進んだ現在は、食べ物をのみ込む力が低下して起こる誤嚥性肺炎や、体の抵抗力が弱くなって感染症を起こすことで生じる肺炎が3位に浮上してきました。
この4つの疾患のうち、心疾患では心筋梗塞が、脳血管疾患では脳出血やくも膜下出血、脳梗塞などが多く、これらは糖尿病や高血圧、脂質異常症、動脈硬化などの生活習慣病が大きく関わっています。つまり、生活習慣病を防がなければ、やがて命に関わる病気を招くこととなるのです。
「メタボ」の改善が生活習慣病の予防に不可欠
生活習慣病の患者さんは年々増加しており、現在は国民医療費のおよそ30パーセントを占めるに至っています。生活習慣病は個々の原因で発症するというより、肥満、特に内臓に脂肪が蓄積した肥満が原因と考えられています。内臓脂肪の蓄積によってさまざまな病気が引き起こされた状態は「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」(以下:メタボ)と呼ばれ、問題視されています。
そのため、メタボを改善することが生活習慣病を予防し、ひいては心疾患や脳血管疾患を防ぐことにつながるとして、2008年より40〜74歳の保険加入者を対象に全国の市町村で「特定健康診査」という新しい健康診断が導入されました。一般には「特定健診」とか「メタボ健診」と呼ばれているのがこの検査です。
ところが、最も注意が必要な40〜50代の人は公私ともに多忙を極める時期のため、健診こそ受けているものの、異常が見つかっても「自覚症状がないから大したことない」とか「時間ができたら何とかしよう」と軽く考えて適切な指導を受けない、あるいは指導を受けていても長く実践するに至っていないのが実情です。
しかし、メタボを放置していると、やがて高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、動脈硬化といった生活習慣病、「いわゆる死の四重奏」が連鎖的に起こり、最終的には心筋梗塞や脳梗塞のような脳・心血管系の病気で倒れることとなります。この流れがドミノ倒しに似ていることから「メタボリックドミノ」といわれています。
さらに怖いのは、脳血管疾患の場合は寝たきりになる危険性をはらんでいる点にあります。脳に異常が起きた部位によっては、半身まひが起こって体が思うように動かせなくなったり、寝たきりになったりします。また、寝たきりになると脳への刺激が低下することで認知症が発症したり、進行しやすくなることもわかっています。したがって、日本人の多くは、がんか心疾患、脳血管疾患で命を落とすか、助かっても寝たきりになって認知症になるという老後が待っていることになります。
今は健康診断の数値が少し高めだったり、疲れやすいといった体調不良で済んでいても、体内では確実にメタボリックドミノが進行しているため、病気になる前段階で食い止めなければ健康を保てなくなるのです。