血管の「酸化」が原因――動脈硬化の発生メカニズム

前回は、「酵素」の体内での働きとメカニズムについて説明しました。今回は、血管の「酸化」が原因である動脈硬化の発生メカニズムを見ていきます。

日本人の死因で目立つ「動脈硬化」に関連する疾病

老化により体内で活性酸素が除去しきれなくなって過剰に発生し、ダメージを受けた細胞の修復が追いつかなくなると、酸化がどんどん進んでしまいます。その被害を最も受けるのが、全身に張り巡らされている血管です。

 

日本人の死因トップ3のなかの心疾患と脳血管疾患は、ほとんどの場合で血管に起こる動脈硬化が原因となっています。

 

血液中には赤血球や白血球、リンパ球、単球、血小板などの血球成分とともに、LDL(悪玉)コレステロールやHDL(善玉)コレステロールも流れています。これは、全身の組織に新しいコレステロールを届け、古くなったコレステロールを回収するためですが、加齢に伴って動脈の壁にはコレステロールやカルシウムなどが沈着しやすくなります。これによって血管壁が厚く硬くなり、血管の内側が狭くなって詰まりやすくなるのが動脈硬化です。

 

動脈は、外膜・中膜・内膜の三層構造をしています。外膜は、コラーゲンやエラスチンという繊維状のタンパク質でできており、ゴムのように伸び縮みする弾力性に富んでいます。中膜は、平滑筋という筋肉でできており、血管内皮細胞や神経細胞でつくられる化学物質やホルモンの働きによって、血管を広げたり縮めたり調節しています。

 

そして、内膜には血液と接して重要な役割を果たす血管内皮細胞層があります。LDLの粒子は小さいので、血管内皮細胞層を通り抜けて奥(中膜側)まで入ることができます。もちろん白血球などの免疫を担っている細胞も、細菌などが侵入したときには素早く撃退するために、血管内皮細胞層を出たり入ったりして防衛しています。

 

高血糖や脂質異常、高血圧は、この血管内皮細胞に負担をかけることで傷つけて機能障害を引き起こします。これによって内皮細胞からは炎症や酸化を起こす活性酸素が発生します。そして、炎症が起きている血管内皮細胞層に正常なLDLが入ってくると、活性酸素によって酸化されてしまいます。

 

また、酸化されたLDLには、リンパ球の一種である単球を血管内皮細胞層に呼び込む作用もあります。単球は血管内皮細胞層をくぐり抜け、その奥まで入るとマクロファージ(血管内の掃除役である貪食細胞)という免疫細胞の一種に変身します。

 

面白いことにマクロファージは、酸化LDLを好んで食べる性質があります。どんどんコレステロールを取り込み、マクロファージに蓄積して膨れ上がった状態のものを泡沫細胞と呼びます。この泡沫細胞は、食べ過ぎてパンパンになると破裂して死んでしまいますが、中にはコレステロールがたくさん含まれていますから、それが流れ出て内皮の奥にコレステロールが沈着し、プラーク(粥腫[じゅくしゅ])ができます。このプラークが血管の内側に蓄積して盛り上がり、ついに血管を狭くしてしまうのです。

 

また、泡沫細胞が破裂しなくても、活性酸素や白血球、マクロファージなどには炎症を起こすとともに、平滑筋細胞をも増殖させる作用があります。その結果、血管が厚く硬くなり、コレステロールの沈着と合わさって血管内腔はより狭くなるのです。

 

こうして血管がだんだん細くなり血液の流れが悪くなると、狭心症や心筋梗塞などの原因になります。

動脈硬化を引き起こす!? 注目される「ホモシステイン」

近年、動脈硬化を引き起こす新たな危険因子として、「ホモシステイン」という物質が注目されています。

 

ホモシステインは、必須アミノ酸の一つである「メチオニン」が代謝される過程でつくられる中間代謝物です。通常、メチオニンからホモシステインに変化しても、葉酸やビタミンB12の働きで再びメチオニンに戻ったり、ビタミンB16の働きでシステインというアミノ酸に変化して、新しい皮膚の形成を助けたり一部は尿として排泄されます。

 

ところが、葉酸やビタミンB12、ビタミンB16が不足してメチオニンの代謝がスムーズに行われなくなると、血液中のホモシステイン濃度が上昇してしまいます。

 

ホモシステインは、酸素と結びついて活性酸素を発生させるだけでなく、血管を広げて血流を良くする物質の働きを抑え、血管の柔軟性を奪って硬くします。さらに、血液中の悪玉コレステロール(LDL)と結びつき、その後、マクロファージの一種に取り込まれて血管壁に付着していきます。

 

実際に、血液中のホモシステイン濃度が高い人は、動脈硬化を起こして脳血管疾患になるリスクが高いという研究結果が数多く報告されています。また、アルツハイマー病にも大きく関わっているともいわれています。

特定医療法人大坪会「小石川東京病院」院長 医学博士

1988年日本大学医学部卒業。専門は脊椎外科。医療連携・地域医療を重点的に行い、腰痛や高齢者医療についての講演も多数。平成23年より現職。高いレベルの脊椎手術と納得感のある丁寧な説明が、患者から信頼を得る。得意分野は脊椎手術全般、骨粗しょう症の治療。
海外文献にも豊富な知見をもち、イギリスで進むビールの健康効果に関する研究に注目。予防医学や健康に貢献するとして情報公開を積極的に進める。

著者紹介

連載健康寿命を脅かす「体の酸化」のメカニズム

本連載は、2015年6月10日刊行の書籍『「病気知らず」の体をつくるビール健康法』から抜粋したものです。記載内容は予防医学の観点からの見解、研究の報告であり、治療法などの効能効果や安全性を保証するものではございません。

「病気知らず」の体をつくる ビール健康法

「病気知らず」の体をつくる ビール健康法

大川 章裕

幻冬舎メディアコンサルティング

ビールで病気を予防する⁉︎ ビールが老化や病気の原因となる「体の酸化」を防ぐ効果が高いと聞いたら驚く人は多いでしょう。 しかし、ビールは古くから健康維持に用いられた歴史を持っており、近年ではその効果が科学的に…

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