<8・9>生命保険の変更等の手続き、特に死亡保険
成年後見がほとんどであるが、よい選択肢とは言えない。また、ほかの選択肢もある。
生命保険の変更等の手続きを成年後見でするのは、大半は死亡保険金を受け取るためだ。しかし、他の動機の場合と同様に、成年後見は被後見人が亡くなるまで続く。そのためランニングコストがかさむ。他に何かやってくれるわけでもない。
お金の面の管理が窮屈になるだけで、本人も家族も「ありがたい」という気がしない。
また、保険会社に電話して確認したところ、他の選択肢として、死亡保険金、受取人と指定されていた人(例えば配偶者)が認知症であっても、「保険金額が1,000万円以下の場合は、家族でも法定相続人全員が実印を押せば、本人の口座に振り込んでもらえる」というものがあることが分かった。
<10>公的年金
公的年金は、家族でも対応できるが、準備が必要だ。
公的年金は、受取人本人が指定した口座に2ヵ月に1度振り込まれる。不幸なことに、本人の認知症などのために「年金受取口座が銀行によって凍結される」ことがないとはいえない。
そのような場合でも、年金自体はその口座に振り込まれ続ける。しかし引き出しができない、ということになる。まさに死活問題。なんとかしないと。
認知症のご家族から相談を受けた際には、私は「最低限、代理人カード(家族カード)を作っておきなさい。今後は本人ではなく、あなたがATMからおろすようにした方がいいですよ」と助言する。銀行に口座凍結の必要性を感じさせないことが肝要だ(つまり、本人に銀行と距離をおかせる)。
その上で、代理人カードはどこで作っておくか。作ってくれる銀行ならどこでもいいが、ゆうちょ銀行がおすすめだ。ゆうちょでは「本人が指定した人」については、同居などしていなくても代理人カードを作ってくれるからだ。
他行の多くは「生計一の3親等内の親族」を条件にしている。現代ではある程度の大人になってから同居する子がいる家族は、あまり多くはない。《銀行も現実を知ってサービスの質をあげてくれよ!》といいたくなる。
同じ理由で、年金受取口座もゆうちょ銀行に切り替えることをおすすめしたい。もちろん家族には手間でもATMからの引出は手伝ってあげてほしい。口座凍結リスクを少しでも減らすことは、老親がいる家族では常識だ。