成年後見人の報酬は未公表、だが──
成年後見は家庭裁判所が関与して行われる(準国家管理)。
成年被後見人は事理弁識能力を完全になくした人が対象で、被後見人は登記され、かつては医師、薬剤師、弁護士、士業、議員、公務員、会社役員などを続けることはできなかった(各法律に「欠格条項」があったのだ)。
「欠格条項」は被後見人をあまりに差別している、との批判が強くなり、現在では法改正がかなり進み「条項」は消え去るはずだが、“不名誉感”は残るので、多くの場合は、お引き取りを願うこととなる。
後見開始の審判は、一度家裁に申し立てを行うと取り消しはできないので、ここまで追い込まれないよう、本人の周囲にいる人は心を配るべきだ。
また、「成年後見人は家族がなる(なれる)」と思っている人が多いが、違う。家族や親族が成年後見人になれるのは、実際には20%を切っている。大半は専門職後見人が就任するので、士業の後見人に対しもちろん報酬が発生する。
さて「成年後見」にかかる費用だが、家庭裁判所が発行する資料の中にはほとんど記載が見当たらない。
そこでGoogle検索した結果、東京家庭裁判所立川支部の資料にたどり着いた。「成年後見人等の報酬額のめやす」平成25年1月1日付の文書だ。いささか古いのでさらに探して最新版の「成年後見申立ての手引き(東京家庭裁判所)」を見つけた。なんと、平成26年版!? しかも「成年後見人の報酬」については、次のような一文があるだけだった。
〈成年後見人等及び成年後見監督人に対する報酬は、家庭裁判所が付与の当否及び付与の金額を決定し、本人の財産から支払われる〉
仕方がないので、やはり立川支部の資料を紹介する。
成年後見コストは想像以上…
かなり明解になった。基本報酬の目安は月額2万円だそうだ。
しかし、管理財産(預貯金及び有価証券等の流動資産)が1,000万円を超えると、成年後見の基本報酬額は月額3万円~6万円に跳ね上がる。
成年被後見人の年齢は、男性だと65歳以上が70%、女性では87%を超える。そして成年後見は本人が亡くなるまで続く。生涯報酬を試算してみよう。
70歳男性の平均余命は15.72年、女性は19.98年
<平成28年簡易生命表>基本報酬額は3万円としておく。
<男性>3万円×12ヵ月×15.7年=565万円
<女性>3万円×12ヵ月×20年=720万円
平均余命は男性8.92歳、女性11.82歳。
<男性>3万円×12ヵ月×8.9年=320万円
<女性>3万円×12ヵ月×11.8年=424万円
あらためて計算してみると、かなりの金額だった。流動資産が1,000万円以上の場合でこの数字だから、5,000万円超ならこの倍の費用がかかる。「成年後見人を付けたら1,000万円はかかる」というのは、リアルな話だったわけだ。