銀行員「?それって何ですか。」…1,000万円超を預けても「お礼も一切なし」!家裁が推進する“上から目線な制度”の実態【行政書士が解説】

銀行員「?それって何ですか。」…1,000万円超を預けても「お礼も一切なし」!家裁が推進する“上から目線な制度”の実態【行政書士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症人口800万人と言われる時代、「成年後見」と「家族信託」、それぞれの費用やサービス内容を理解していないと大変なことになるかもしれない。いざというときに考え始めるのでは、遅いのだ。本連載では、静岡県家族信託協会代表で行政書士の石川秀樹氏が、両制度について詳しく解説する。

銀行の対応ははっきり言って「本当に遅れている!」

「家族信託はよさそうだが、費用が高い」とよく聞く。その通りで、認知症対策として普通の家族はおいそれと「家族信託の契約書作成」を依頼はできない。

 

首都圏では、1件100万円の報酬も珍しくないようだ。とはいえ、生涯コスト1,000万円もザラな後見費用よりは安い。でも、二の足を踏んでも仕方ないかもしれない。

 

またある相談者は、私にこんなことを尋ねてきた。

 

「先生の事務所は、家族信託の料金は不動産の価格と連動していますか?」…他の事務所のことはまったく関知していないので、これを聞かれて「? ? ?」と首をかしげた。

 

確かに、税理士に頼む「相続税申告」は遺産の価額によって報酬が変わることは知っている。『5,000万円』の場合と『5億円』の場合では難しさや手間暇が違うとは思う。しかし……。そういえば公証人の手数料も、契約対象の価額によって報酬が増減していた。

 

私たちの業界も五十歩百歩、そういうところはある。しかし、数億円の豪邸だろうがボロ家だろうが、手続きする手間は同じだし、契約書に反映させる手間暇も変わりはしない。だから私は、そんなことを値決めの対象にはしない。差があるとすれば、契約案文の難しさのみだ。

 

「こう書いていいのか?」「法的には大丈夫か?」「例はあるのか?」「手落ちはないか?」

 

そういうことに時間を取られれば、少しお高くなるだろう。

 

「信託財産に組み込む不動産が1,000万円だから安く、1億円だと高い」なんてことは私であればしない。基準はあくまで契約書作成の難しさ、時間がかかる複雑な案件かどうかだ。

 

例えば信託不動産が自宅だけであれば、家族信託の契約書はそれほど複雑にはなりそうにない。自宅と収益マンションなどになると、確かに難易度は上がる。銀行との交渉などもありそうで手間暇もかかるから、報酬がアップしてもお許しを願いたい(ただ、それで100万円です、150万円かかります、という話ではない)。

 

家族信託は普及途上の財産管理法のため、銀行など金融機関の対応はすこぶる遅れている。はっきり言って「本当に遅れている!」銀行さん、せめて「成年後見」と同等くらいの現場周知を徹底してほしい(いや、本音をいえば「任意後見契約」の認知度には銀行間の差がありすぎる! ゆえに、成年後見の知識も水準に届いている行員・役員はとても少ないのではないか)。

 

認知症の人が800万人いる時代、「判断能力を失くした人の金融資産の出し入れをどうするか」は天下の大事だ。腹をくくって新しい制度や財産管理法に対応していくのが金融機関の務めであってほしい。いつまでも「家族信託? それって何ですか」は通らないと思う。「受託者が使う信託口(シンタクグチ)口座を開設してもらえますか?」と尋ねて、役席者までがチンプンカンプンだったりすると、「出直します」とくびすを返すしかなく、実にがっかりする。

 

銀行がそんなだから、金融機関等への「家族信託とは何か」という説明や、説得のために、多大なエネルギーを費やさなければならない、という事情があることは事実だ。

 

家族信託の契約書作成案件が自筆遺言書の文案作成に比べて高めな設定になるのは、その辺りの事情があるからだとご理解していただきたい。

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