成年後見制度の利用者は1年で約4万人!
今回は一覧表の30項目のうち、特に「個人」に関係のある項目について、成年後見と家族信託、どちらで行う方が良いのか、一つずつ比較していく。
<1・2・3・4>不動産関係について
一見、成年後見は金融資産に強そうだが、1~4の不動産関係については、成年後見人よりも家族信託のほうが圧倒的に有利だ。
<5>預貯金について
預貯金のことになると、家族より成年後見人が強い。理由は明白、金融機関にとっては成年後見制度を使ってもらうのがいちばん安全で安心なので、金融機関はこぞって成年後見制度を推し進めようとしているからだ。
たとえば、2021年の2月に全国銀行協会が「家族の代理引き出しに関する指針」を全国の銀行に対して発表した。その結果、この1年、成年後見制度に駆け込む人は2,574人(前年比7%)も増え4万人に限りなく近づいた。
だが、その銀行の行動は、必ずしも利用者を思ってのものではないだろう。
なぜなら成年後見人を使った場合、口座凍結の解除と引き換えに、本人及び家族はお金を今まで通りに使う自由を永久に奪われるといったデメリットが存在するからだ。
<6・7>株や投資信託について
株や投資信託は家族信託のほうが有利だ。
成年後見人を株取引の際に用いる場合、その主な業務は株や投資信託、債券の「止め役」だろう。家族は取引を中止にできないが、成年後見人なら、直ちに可能だ。だからこそそのために慌てて用いる人は多いのではないか。
しかし、後見人は運用ができない。また、株取引を止める、預貯金の口座を解約するだけで成年後見制度を使うのは、コストパフォーマンスが悪い。
なぜなら、後見人が被後見人の財産を管理することになるため、預金解約のときと同じで、預貯金も生命保険も住宅や不動産の管理も、全部成年後見人が行なうことになるためだ。
そのうえ、成年後見人を1度用いれば、本人は2度と取引できないというデメリットもある。この点、家族信託の受託者は、止めることも、運用することもできる。