<11・12・13>遺産分割協議や遺留分侵害額請求等の法律手続き
遺産分割協議や遺留分侵害額請求等の法律手続きは成年後見人ができることが多い。しかし、成年後見人は全員の利益を考えて動くわけではないため、家族信託による対策があったほうが良い。
成年後見人を付けたら最後、成年後見人は配偶者のために「法定相続分」を主張するので、遺産分割の仕方が硬直的になる。そうなれば、「俺が母の面倒をみるから、父の遺産を少し多めに相続するよ」などという“家族の工夫”が通用しない恐れが出てくる。
では成年後見人をつけなければいいのではないのか、という話だが、遺産分割協議が必要になるため、配偶者に判断能力が欠けている場合(認知症など)、家族信託などをしていなければ、成年後見人を付けなければならない。
あなたに認知症の懸念がまったくないような場合でも、配偶者に認知症の兆しがあるなら、家族信託をした方がゼッタイにいい。最低限、遺言を書いておかないとヤバい。
遺言適齢期の人は(財産を持っている)自分が元気だからわが家は安泰、などと気を抜かないでもらいたい。配偶者の健康状態も気にかけて、財産の引継ぎ方を真剣に考えてもらわなければならない。
<14>財産承継、節税対策
財産承継、節税対策となると、成年後見はデメリットが圧倒的に大きい。
まず、成年後見人を付けざるを得ない人(認知症など)が家庭内にいる場合、遺言の効力に重大な支障が生じる恐れがある。
妻に限らず成年後見制度は(家族の意向より=遺言者の意向も)被後見人の財産を守るための制度なので、成年後見人の判断次第で、遺言より「被後見人の相続人としての権利」擁護が優先されることが起こり得る。極端な例だが、「遺言」である財産の承継者を決めてあっても、後見人等がその財産を処分してしまうということさえある。
本人の財産なのだから遺言者本人の意思が何より優先されるべきだと思うが、成年後見制度は別の判断基準で動いているので、家族にとっては、まことに始末の悪い結果になることがあるわけだ。
これも知っておいてほしい。成年後見人がいる場合、被後見人の財産を生前贈与に向けることはまったく不可能になる。被後見人の財産を減らすことは不可。「相続対策だ」といってもダメ。ましてや「節税のため」などといえば、「それは相続人の都合でしょ」と一蹴されるだろう。
この点、家族信託の立ち位置はまったく違う。「信託財産」について、家族信託はその承継を遺言よりも堅固に指定することができる。遺言も場合によっては必要だ。信託しなかった財産の承継は、遺言で指示しなければならない。だから家族信託と遺言と、2つのツールを活用してほしい。家族の将来を思い、真剣に相続の形を考えて。そうすれば確実にその願いは叶う。
さらに家族信託を使えば、相続人の次の世代の承継についてまで自分の思いを通すことができる。家族信託にはこのような超遺言機能もあるから、相続を考える場合、必須で最強のツールとなる。