目立った成果がないと悲観する必要なし
■学生時代に打ち込んだものが必要?
新卒採用では、学生時代に打ち込んだものがない、目立った成果を残していないという人がいます。こういった人は一見すると評価するポイントがなく、落としやすいかもしれません。
一方、学生時代にそれなりの成果を残してきた人でも、いざ会社に入ってからの活躍はそれほどでもない人もいます。学生と社会人では、多くの場合で求められるレベルや環境の次元が異なるからです。つまり、学生の尺度で「達成した」実績の差を、社会人の尺度で見るのは厳しいと言わざるを得ません。
よって、まずは成果自体の大きさでなく、インプット(環境)とアウトプット(成果)の「比率」、つまり学生時代にコンビニのアルバイトを続けていたにせよ、学園祭でイベントの企画をした経験があるにせよ、どんなレベルの環境や機会で、どんなレベル成果を出せたのかを見ましょう。
例えば、コンビニのアルバイトを3年半続けていた人材がいたとします。インプットとしてはありふれたことだけをしていたように見えます。しかし、3年半の勤務経験の中でどのようなことを考え、行動してきたのかを具体的に確認することを通じて、仕事に対する姿勢を見極めることなどができます。
特に、いくら成果が小さなことだったとしても、そこから「仕事を楽しむ力」を持っている人だとわかることがあります。このような人材は高く評価するべきです。仕事は、一般的には制約された条件下で義務として与えられるため、「仕事を楽しめる力があるか」は非常に重要な判断基準になります。
面接担当者は、新卒採用でも成果自体を評価しがちですが、このようにプロセスを評価するのがよいでしょう。
その意味では、学業から見極めることも有効です。学業は多くの学生によって「やらなければならないこと」だからです。
以前、高いGPA(成績平均点)の学生にインタビューをした際、目標を自ら立てて計画的に学習に取り組める人がいたり、自分が履修すると決めた科目だから責任感を持って最後までやりきりたいと考えていたりする人がいました。やらなければならないことを乗り切るため、いかにして頑張るかを見つけ出して努力した人が、GPAの高い人だったのです。
このように、経験した事柄をどのように認識し、意味付け、セルフモチベートしてきたのかを、ふつうのエピソードから読み取ることで、その人を見極めることは十分にできるのです。
•面接担当者は、特筆すべきエピソード以外にも目を向けて、成果よりもプロセスを評価する。
•平均的なエピソードから候補者を見極める際には、その候補者自身が経験してきた事柄をどのように意味づけしていたかをよく確認する。
曽和 利光
株式会社人材研究所 代表取締役社長