いまだ終わりのみえないロシア・ウクライナ戦争。各メディアによる報道で大まかな状況は把握できますが、現地の詳しい様子をうかがい知ることはできません。そのようななか、元国連職員で現在はロンドンに住む谷本真由美氏は、日本人の知らない「ロシア」と「ロシア兵」の実態を解説します。にわかには信じられないロシア兵の「給与額」とは……みていきましょう。

正規兵でも月給10万円…ロシア兵の「過酷すぎる」待遇

ちなみにこの貧乏っぷりは私が訪問したロシアの極東や、かつてはロシアだった中央アジアのカザフスタンでも似たようなところがあります。ここまではひどくないし、今はおしゃれカフェなどもできて改善されましたが、それでも日本や東南アジアの大都会の基準だととんでもなく貧乏です。

 

日本のマスコミに登場する主要都市の街には外資系のカフェとかZARAやH&Mといったファッションブランドの店舗があり、一見西側先進国と似たような風景です。

 

しかし、少し郊外のほうは道路が舗装されてなく、あばら家が建ち並んでいます。現地に行くと冷戦時代にアメリカと張り合っていたあの超軍事大国は一体何だったのかという疑念しか浮かんできません。

 

さらにはウクライナで戦闘中のロシア軍が携行する食料の賞味期限が切れまくりで、ひどいものは2015年以前だったことが露呈しても驚くほどではありません。

 

食料の提供はロシアの民間軍事会社(PMC)のワグナー・グループ(WagnerGroup)で、同社はアメリカの大統領選挙にネットを駆使して影響力を及ぼしたインターネット・リサーチ・エージェンシー(InternetResearchAgency)も運営しています。

 

ワグナーはロシア政府と巨額の調達契約を結び、食料や営舎の品質を抑えて中抜きすることで莫大な利益を得ていたという疑惑があります。

 

ロシア軍の兵站はひどく、食料不足の兵士が店舗を襲うだけではなく、ウクライナの田舎で、ある村の民家に食料を物乞いして回っていたのです。

 

アメリカの軍事アナリストの分析では、軍用車両のタイヤは激安の中国製のため摩耗が激しく、雪解けの泥の中を走行できない状態でした。夜間用の暗視ゴーグルがなく、暗くなると戦車や軍用車両は移動ができません。GPSはなくソ連時代の紙の地図で移動せざるを得ないという悲惨な状態だったそうです。

 

ちなみに2022年9月にはプーチンが部分的動員令を発動し、数多くのロシア人が徴兵されました。またイギリスにおける2022年5月の報告では、ロシアの徴兵兵士の給料は時給換算で10円、正規兵でも月給10万円に満たないのです。

 

日本のブラック企業なんぞ、まだまだ甘いということです。

 

 

谷本 真由美

公認情報システム監査人(CISA)

 

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本記事は、谷本真由美氏の著書『世界のニュースを日本人は何も知らない4(ワニブックスPLUS新書)』より一部を抜粋し、再編集したものです。

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