6番なのにセンター…帝京野球部の「背番号」と「ポジションが」一致しないワケ【甲子園制覇を3度導いた名監督が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

才能や素質のある部下に出会ったとき、能力を最大限発揮できるようにするために、上司はどう指導すればよいのでしょうか。本連載では帝京高等学校硬式野球部名誉監督の前田三夫氏が、著書である『いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方』から、監督時代の経験に基づく指導者としての態度や接し方について解説します。

帝京の選手の背番号とポジションが一致しなかった理由

勝てるチームの条件のひとつに、「指導者が選手に固執した考え方をもたないこと」が挙げられます。私は選手を起用するにあたっては、50年間、この考え方をマイルールとしてきました。
 

監督在任中、他の学校の監督さんから、「帝京は背番号とポジションが一致しないですね」と言われていました。たしかに、背番号5をつけている選手がセンターだったり、あるいは背番号7をつけている選手がショートを守ったりと、目まぐるしくポジションが替わっているように思われていたはずです。

 

これにはある戦略がありました。それは、「選手を適材適所で判断して起用する」ということです。

 

たとえば背番号6をつけていると、普通ならば「ショートを守る選手」だと思うはずです。けれども普段の守備練習では、ショート以外の他の内野のポジションを守らせたり、外野を守らせたりすることもある。そうしたなか、センターを守らせてノックをしたとき、俊足と強肩を発揮するようなプレーを見せた場合には、「ひょっとしたら、あの子はセンターも行けるんじゃないか」という考えに及ぶのです。

 

そこで紅白戦や練習試合で、それまでのショート以外のポジション、今例に挙げた選手の場合で言えばセンターで起用したとき、随所にいいプレーをしたなら、「やっぱりショート以外のポジションでも起用してみよう」という結論にいたり、実際に公式戦でもセンターで起用していた――というのが事の真相です。

他のポジションの難しさを体感させる

また、「他のポジションを守らせることで、その難しさを知ってもらう」ということも実践していました。

 

内野手を外野のポジションで守らせたり、反対に外野手を内野のポジションで守らせたりする。すると、いつもと違うポジションに就くということで、不慣れな面が出てきます。たとえばライトを守っている選手がセカンドに入った場合、ダブルプレーを取る際の二塁ベースに入る際の足の運び、ファーストへの送球と一連の動作を同時で行なうことは、慣れていないと意外に難しく感じるものです。

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    帝京高等学校硬式野球部 名誉監督

    帝京高等学校硬式野球部名誉監督。千葉県袖ケ浦市出身、木更津中央高等学校(現・木更津総合高等学校)・帝京大学卒業。木更津中央高等学校時代は三塁手として活躍するも甲子園の出場経験はなし。大学時代は4年の秋に三塁ベースコーチとしてグラウンドに立っただけで選手としては公式戦出場なし。練習を手伝っていた縁で1972年帝京大学卒業と同時に帝京高校野球部監督に就任。1978年春の選抜高校野球で甲子園初出場を果たし、1980年春は伊東昭光投手を擁し準優勝。以後、練習場である校庭が(こちらも強豪となる)サッカー部と共用という恵まれない環境に長らくありながら、89年夏、92年春、95年夏と全国優勝3度の強豪チームへと育て上げた。同校野球部は高校野球ファンや国内メディアから「東の横綱」と呼ばれるほどの甲子園強豪校となる。教え子となるOBに伊東昭光(元・ヤクルト)、芝草宇宙(元・日本ハム-ソフトバンクなど)、吉岡雄二(元・巨人-近鉄-楽天など)、三澤興一(元・巨人-近鉄-ヤクルトなど)、森本稀哲(元・日本ハム-DeNA-西武)、中村晃(現・ソフトバンク)、杉谷拳士(現・日本ハム)、山﨑康晃(現・DeNA)、原口文仁(現・阪神)、松本剛(現・日本ハム)、清水昇(現・ヤクルト)、タレントの石橋貴明(お笑いコンビ・とんねるず)など多数。2021年8月30日、監督を退任。現在は名誉監督としてチームを支え続けている。

    写真:上野裕二

    著者紹介

    連載甲子園・全国制覇に3度導いた帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方

    ※ 本連載は、前田三夫氏の著書『いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方』(日本実業出版社)から一部を抜粋し、再構成したものです

    いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方

    いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方

    前田 三夫

    日本実業出版社

    ◎全国制覇3回、甲子園通算51勝(夏30勝、春21勝) 希代の名将がはじめて明かす 最大限の力を引き出す最適な努力 甲子園の名将として知られ、数多くのプロ野球選手を輩出してきた帝京高校・前田三夫名誉監督。 監督が語る「…

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