帝京の選手の背番号とポジションが一致しなかった理由
勝てるチームの条件のひとつに、「指導者が選手に固執した考え方をもたないこと」が挙げられます。私は選手を起用するにあたっては、50年間、この考え方をマイルールとしてきました。
監督在任中、他の学校の監督さんから、「帝京は背番号とポジションが一致しないですね」と言われていました。たしかに、背番号5をつけている選手がセンターだったり、あるいは背番号7をつけている選手がショートを守ったりと、目まぐるしくポジションが替わっているように思われていたはずです。
これにはある戦略がありました。それは、「選手を適材適所で判断して起用する」ということです。
たとえば背番号6をつけていると、普通ならば「ショートを守る選手」だと思うはずです。けれども普段の守備練習では、ショート以外の他の内野のポジションを守らせたり、外野を守らせたりすることもある。そうしたなか、センターを守らせてノックをしたとき、俊足と強肩を発揮するようなプレーを見せた場合には、「ひょっとしたら、あの子はセンターも行けるんじゃないか」という考えに及ぶのです。
そこで紅白戦や練習試合で、それまでのショート以外のポジション、今例に挙げた選手の場合で言えばセンターで起用したとき、随所にいいプレーをしたなら、「やっぱりショート以外のポジションでも起用してみよう」という結論にいたり、実際に公式戦でもセンターで起用していた――というのが事の真相です。
他のポジションの難しさを体感させる
また、「他のポジションを守らせることで、その難しさを知ってもらう」ということも実践していました。
内野手を外野のポジションで守らせたり、反対に外野手を内野のポジションで守らせたりする。すると、いつもと違うポジションに就くということで、不慣れな面が出てきます。たとえばライトを守っている選手がセカンドに入った場合、ダブルプレーを取る際の二塁ベースに入る際の足の運び、ファーストへの送球と一連の動作を同時で行なうことは、慣れていないと意外に難しく感じるものです。