【帝京高校・前田流】落ち込んでいる選手、伸び悩んでいる選手の指導法
落ち込んでいる選手、伸び悩んでいる選手にはどう指導するのか。私の場合は、「しばらく放っておきつつ、裏ではフォローする」ということを実践していました。
ケース① もし選手が「自責の念」に駆られていたら
ある年の秋の東京大会で、こんなことがありました。
その試合で帝京は負けてしまったのですが、打たれた投手が試合後に、泣き崩れながら壁に頭をガンガン叩きつけていたのです。自分の力のなさから負けてしまった悔しさは理解できます。それをバネに一生懸命練習して、翌年の春、そして最後の夏に羽ばたいてくれればいい。私はそう考えていました。
このようなとき、私は選手を責めることなど一切しません。その代わり、こんな言葉をかけてあげるようにしていました。
「この試合は負けてしまったけれども、お前さんが自分自身を責めるようなことなんかしなくていい。その分、ひと冬越えてスケールアップすればいいじゃないか」
このように、「お前さんには期待しているぞ」という言葉を必ずかけてあげるようにしています。そうしてその後は、じっと見守ってあげること。
このようなタイプの選手は、手を抜かずに一生懸命練習に励みますから、技術的なアドバイスを求められたとき以外は、あえて余計な言葉をかけてあげる必要はないのです。
ケース② もし選手が「技術的」に伸び悩んでいたら
反対に、技術的に伸び悩んでいる選手、思うような成長曲線を描けないままでいるような選手に対しては、あえて放っておきます。この手のタイプはレギュラーになれない控えの選手によく見られますが、指導者が手取り足取り教えてあげると、それが当たり前のようになってしまい、「自分で考えて現状を打破する」ことができなくなってしまいがちになるのです。
ですからあえて放置し、自ら考えて練習して、技術的な欠点の解消を図るのかどうかを遠くから見守り続ける。放置という言葉を使いましたが、「見守り続ける」という姿勢は必ず持っているようにするのです。
この手のタイプの選手は、技術的な欠点の克服にあたっているとき、必ずと言っていいほど壁にぶち当たります。その場合、自分で考えるだけでは問題は解消できず、他者にアドバイスを求めてくるものです。
このときが指導者の出番です。たとえば打撃に問題点があるような選手の場合、自ら監督に質問をぶつけてきたら、このようにアドバイスをします。