とんねるず石橋とプロ野球選手を育てた「帝京高校野球部」名監督が、スランプの選手に必ずかけていた「ひと言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「子どもや部下のやる気を引き出したい」「能力を最大限発揮できるよう背中を押したい」そう願う指導者は、どのように導けばいいのでしょうか――。数多くのプロ野球選手、さらにはとんねるずの石橋貴明を輩出した帝京高校野球部。本強豪校の監督として全国制覇を3度経験、甲子園通算51回の勝ち星をあげた名監督・前田三夫氏が自身の経験をもとに、子どもの「伸びしろ」の見つけ方・育て方を解説します。

【帝京高校・前田流】落ち込んでいる選手、伸び悩んでいる選手の指導法

落ち込んでいる選手、伸び悩んでいる選手にはどう指導するのか。私の場合は、「しばらく放っておきつつ、裏ではフォローする」ということを実践していました。

ケース① もし選手が「自責の念」に駆られていたら

ある年の秋の東京大会で、こんなことがありました。

 

その試合で帝京は負けてしまったのですが、打たれた投手が試合後に、泣き崩れながら壁に頭をガンガン叩きつけていたのです。自分の力のなさから負けてしまった悔しさは理解できます。それをバネに一生懸命練習して、翌年の春、そして最後の夏に羽ばたいてくれればいい。私はそう考えていました。

 

このようなとき、私は選手を責めることなど一切しません。その代わり、こんな言葉をかけてあげるようにしていました。

 

「この試合は負けてしまったけれども、お前さんが自分自身を責めるようなことなんかしなくていい。その分、ひと冬越えてスケールアップすればいいじゃないか」

 

このように、「お前さんには期待しているぞ」という言葉を必ずかけてあげるようにしています。そうしてその後は、じっと見守ってあげること。

 

このようなタイプの選手は、手を抜かずに一生懸命練習に励みますから、技術的なアドバイスを求められたとき以外は、あえて余計な言葉をかけてあげる必要はないのです。

ケース② もし選手が「技術的」に伸び悩んでいたら

反対に、技術的に伸び悩んでいる選手、思うような成長曲線を描けないままでいるような選手に対しては、あえて放っておきます。この手のタイプはレギュラーになれない控えの選手によく見られますが、指導者が手取り足取り教えてあげると、それが当たり前のようになってしまい、「自分で考えて現状を打破する」ことができなくなってしまいがちになるのです。

 

ですからあえて放置し、自ら考えて練習して、技術的な欠点の解消を図るのかどうかを遠くから見守り続ける。放置という言葉を使いましたが、「見守り続ける」という姿勢は必ず持っているようにするのです。

 

この手のタイプの選手は、技術的な欠点の克服にあたっているとき、必ずと言っていいほど壁にぶち当たります。その場合、自分で考えるだけでは問題は解消できず、他者にアドバイスを求めてくるものです。

 

このときが指導者の出番です。たとえば打撃に問題点があるような選手の場合、自ら監督に質問をぶつけてきたら、このようにアドバイスをします。

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    帝京高等学校硬式野球部 名誉監督

    帝京高等学校硬式野球部名誉監督。千葉県袖ケ浦市出身、木更津中央高等学校(現・木更津総合高等学校)・帝京大学卒業。木更津中央高等学校時代は三塁手として活躍するも甲子園の出場経験はなし。大学時代は4年の秋に三塁ベースコーチとしてグラウンドに立っただけで選手としては公式戦出場なし。練習を手伝っていた縁で1972年帝京大学卒業と同時に帝京高校野球部監督に就任。1978年春の選抜高校野球で甲子園初出場を果たし、1980年春は伊東昭光投手を擁し準優勝。以後、練習場である校庭が(こちらも強豪となる)サッカー部と共用という恵まれない環境に長らくありながら、89年夏、92年春、95年夏と全国優勝3度の強豪チームへと育て上げた。同校野球部は高校野球ファンや国内メディアから「東の横綱」と呼ばれるほどの甲子園強豪校となる。教え子となるOBに伊東昭光(元・ヤクルト)、芝草宇宙(元・日本ハム-ソフトバンクなど)、吉岡雄二(元・巨人-近鉄-楽天など)、三澤興一(元・巨人-近鉄-ヤクルトなど)、森本稀哲(元・日本ハム-DeNA-西武)、中村晃(現・ソフトバンク)、杉谷拳士(現・日本ハム)、山﨑康晃(現・DeNA)、原口文仁(現・阪神)、松本剛(現・日本ハム)、清水昇(現・ヤクルト)、タレントの石橋貴明(お笑いコンビ・とんねるず)など多数。2021年8月30日、監督を退任。現在は名誉監督としてチームを支え続けている。

    写真:上野裕二

    著者紹介

    連載甲子園・全国制覇に3度導いた帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方

    ※ 本連載は、前田三夫氏の著書『いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方』(日本実業出版社)から一部を抜粋し、再構成したものです

    いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方

    いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方

    前田 三夫

    日本実業出版社

    ◎全国制覇3回、甲子園通算51勝(夏30勝、春21勝) 希代の名将がはじめて明かす 最大限の力を引き出す最適な努力 甲子園の名将として知られ、数多くのプロ野球選手を輩出してきた帝京高校・前田三夫名誉監督。 監督が語る「…

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