(※写真はイメージです/PIXTA)

「子どもや部下のやる気を引き出したい」「能力を最大限発揮できるよう背中を押したい」そう願う指導者は、どのように導けばいいのでしょうか――。数多くのプロ野球選手、さらにはとんねるずの石橋貴明を輩出した帝京高校野球部。本強豪校の監督として全国制覇を3度経験、甲子園通算51回の勝ち星をあげた名監督・前田三夫氏が自身の経験をもとに、子どもの「伸びしろ」の見つけ方・育て方を解説します。

帝京高校・前田流「叱り方」「ほめ方」

「叱るとき」と「ほめるとき」に大切なのは、「タイミングを外さないこと」。この一言に尽きます。

〇「叱り方」 失敗には2種類ある

まずは「叱るとき」。私は一生懸命取り組んだ結果、失敗してしまったことにとやかく言うことはまずありません。失敗した原因を省みて「次は同じミスをしないようにしていこう」と、一言言うだけで終わりです。

 

問題は「プレー中に手を抜いたときや明らかに真剣さが足りないとき」です。これはレギュラーだとか控えだとかは一切関係ありません。レギュラークラスの選手がこうした行ないをしたにもかかわらず、指導者がそれをみすみす見逃すようでは、チームの士気に影響しますし、チーム内の雰囲気も緩みます。

 

こうしたときは予期せぬケガなどのアクシデントが起こりやすいもの。そうしたことを防ぐ意味合いでも、必ずその場で叱責します。

 

ただ叱るだけでなく、強い口調で注意することもあります。このとき言われたほうの選手が不貞腐れるようなことはほぼありません。自分でも悪かったという思いがあるからでしょうが、真摯に反省していることが多いのです。

 

私とて本音では選手を「叱る」ことなどしたくありません。叱った相手に憎まれることもありますし、人間関係に影響するかもしれないと考えると躊躇してしまうものです。けれども、「叱る」ことで相手が気づいて自ら省みることもある。ですから「叱る」という行為は、私は選手を指導するうえで必要なことだと考えているのです。

〇「ほめ方」 苦しい守備練習をいかに楽しいと思わせるか

反対に「ほめるとき」は、いいプレーをしたとき。私は惜しみない賛辞を贈るようにしています。

 

たとえばシートノックをしていた際、ノッカーの私が三塁のライン際に打球を打ってそれを三塁手が好捕して一塁にいい送球をしたときには、

 

「サード、今のはよかったぞ! そのプレーを試合でしたらピッチャーは助かるぞ!」

 

と笑顔で言ってその場を盛り上げ、ときには拍手を送ることもあります。大げさと思われるかもしれませんが、これは実際に行なっていました。

 

打撃に比べて守備の練習というのは苦しい時間と考えがちですが、守備を鍛えておかなければ実際の試合では通用しないことが多いものです。苦しい守備練習をいかに楽しいと思わせるか。そのために「ほめること」がいい効用となっていることが多いのです。

 

このときほめられた選手は、「ようし、もう一丁!」と乗り気になってきます。そうして一本、また一本とノックを打っていく。ほめることで選手のモチベーションが上がり、技術の上達にもつながっていく。

 

つまり、選手がうまくなるチャンスでもあるのです。 同時にほめることでその選手だけでなく、グラウンド全体が盛り上がります。ひいてはそれがチーム全体の活気へとつながり、いいムードを醸し出していくのです。

次ページ「アメ」と「ムチ」のタイミングと塩梅が肝

※ 本連載は、前田三夫氏の著書『いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方』(日本実業出版社)から一部を抜粋し、再構成したものです

いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方

いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方

前田 三夫

日本実業出版社

◎全国制覇3回、甲子園通算51勝(夏30勝、春21勝) 希代の名将がはじめて明かす 最大限の力を引き出す最適な努力 甲子園の名将として知られ、数多くのプロ野球選手を輩出してきた帝京高校・前田三夫名誉監督。 監督が語る「…

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