才能や素質のある部下に出会ったとき、能力を最大限発揮できるようにするために、上司はどう指導すればよいのでしょうか。本連載では帝京高等学校硬式野球部名誉監督の前田三夫氏が、著書である『いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方』から、監督時代の経験に基づく指導者としての態度や接し方について解説します。
別ポジションを守る際の「違和感」が選手を成長させる
「あれ、うまくいかないな」
「イメージではもっとスムーズにできると思っていたのに、どうしてだろう?」
と思ったときに、あらためてレギュラーのセカンドの選手の動きを見てみると、「自分のほうがギクシャクした動きになっている」ことに気がつくのです。
それにセカンドとライトでは守ったときに景色が変わります。このことで違和感を覚え、守りにくさや難しさを感じる選手も意外と多いものです。これは他のポジションでも同様のことが言えます。
ひとつのポジションに固執させずに、いろいろなポジションを守らせることによって、それぞれの難しさを学んでいく。結果、「このポジションに就いたときには、こういうことが想定される」と守備に対する考え方の視野が広がり、それが選手の能力を広げていくことにもつながっていくのです。
選手の可能性を引き出すため、視野を広くもつ
ひとつのポジションに特化させ、専門性を高めることも私は否定しません。しかし、複数のポジションを守らせることが選手の新たな能力を引き出せることもあるということを、私は声を大にして伝えておきたいのです。
■前田の法則
選手の可能性を引き出すために、あらゆることを試してみる
前田 三夫
帝京高等学校硬式野球部 名誉監督
帝京高等学校硬式野球部
名誉監督
帝京高等学校硬式野球部名誉監督。千葉県袖ケ浦市出身、木更津中央高等学校(現・木更津総合高等学校)・帝京大学卒業。木更津中央高等学校時代は三塁手として活躍するも甲子園の出場経験はなし。大学時代は4年の秋に三塁ベースコーチとしてグラウンドに立っただけで選手としては公式戦出場なし。練習を手伝っていた縁で1972年帝京大学卒業と同時に帝京高校野球部監督に就任。1978年春の選抜高校野球で甲子園初出場を果たし、1980年春は伊東昭光投手を擁し準優勝。以後、練習場である校庭が(こちらも強豪となる)サッカー部と共用という恵まれない環境に長らくありながら、89年夏、92年春、95年夏と全国優勝3度の強豪チームへと育て上げた。同校野球部は高校野球ファンや国内メディアから「東の横綱」と呼ばれるほどの甲子園強豪校となる。教え子となるOBに伊東昭光(元・ヤクルト)、芝草宇宙(元・日本ハム-ソフトバンクなど)、吉岡雄二(元・巨人-近鉄-楽天など)、三澤興一(元・巨人-近鉄-ヤクルトなど)、森本稀哲(元・日本ハム-DeNA-西武)、中村晃(現・ソフトバンク)、杉谷拳士(現・日本ハム)、山﨑康晃(現・DeNA)、原口文仁(現・阪神)、松本剛(現・日本ハム)、清水昇(現・ヤクルト)、タレントの石橋貴明(お笑いコンビ・とんねるず)など多数。2021年8月30日、監督を退任。現在は名誉監督としてチームを支え続けている。
写真:上野裕二
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連載甲子園・全国制覇に3度導いた帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方