(※写真はイメージです/PIXTA)

才能や素質のある部下に出会ったとき、能力を最大限発揮できるようにするために、上司はどう指導すればよいのでしょうか。本連載では帝京高等学校硬式野球部名誉監督の前田三夫氏が、著書である『いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方』から、監督時代の経験に基づく指導者としての態度や接し方について解説します。

家族と二人三脚で選手の「食育」を開始

私はおばあさんにこう言いました。

 

「明日から大きなお弁当箱にご飯を入れて、おかずは別の弁当箱に入れて持たせてください。私と一緒に食事をさせます」

 

そうしてお昼休みになると、芝草と一緒に食事をしました。体の線の細い選手に肉体の成長を促進させるには、成長期である高校時代に栄養価の高い食事を多く摂らせることが一番なのです。

 

「食育」で身体のみならずメンタルも鍛える

 

はじめの頃はこの作戦が功を奏していました。けれどもしばらくすると、お弁当の食べ終わるスピードが異様に速くなったのです。

 

「監督さん、食べ終わりました」

 

私が食べはじめてそう時間のたたないうちにこう言うので、「ちょっとお弁当箱を見せてみなさい」と私が返すと、芝草がなんだかソワソワしている。おかしいなと思い弁当箱を見ると、なんと上げ底にしていたのです。「これはダメだろう」、私は彼を叱りました。芝草本人が当時、「どうしてオレばかり叱られなきゃいけないんだろう」と考えていたかもしれません。

 

けれどもそれまでに監督として甲子園を春夏合わせて5度経験していた私にしてみれば、「ここで妥協していては、彼は真のエースになれない」という確信を持っていました。素質はいいものがあるにもかかわらず、精神的な甘さを抱えたままだと、大舞台のここ一番という場面で実力を存分に発揮できなくなる。 それどころか、ピンチの場面を迎えるとベンチをチラチラ見ては、「いつ代えるんですか?」と弱気の虫が途端に顔を出す。

 

このような投手の下では、チームはひとつにまとまりません。どんな場面を迎えても、涼しげな顔をして威風堂々としている。芝草にはそうした風格をもった投手に育ってもらいたかったのです。

 

どんなに潜在的な素質を持った子でも、表面に出てくるひ弱さを克服するには相応の時間が必要です。このとき大切なのは、指導者は決してサジを投げずに根気よく向き合うこと。そうすることでしか、こうしたタイプの選手の道は開けないと考えるべきなのです。

 

■前田の法則

 

ひ弱さを克服するには相応の時間が必要

 

 

前田 三夫

帝京高等学校硬式野球部 名誉監督

 

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    ※ 本連載は、前田三夫氏の著書『いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方』(日本実業出版社)から一部を抜粋し、再構成したものです

    いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方

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    前田 三夫

    日本実業出版社

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