(※写真はイメージです/PIXTA)

仕事が早く優秀なビジネスマンのなかには、部下や同僚の質問、相談に対して「あとは俺が(私が)やっておくから」と仕事を引き継ぐ人がいます。大学野球日本代表も経験した異色の経営コンサルタントである中田仁之氏は、このような人がはらむ「組織をダメにする可能性」について指摘します。周囲からは「頼りになる上司・同僚」というイメージを持たれることも多いタイプですが、なにがダメなのか、みていきましょう。

リーダーの「あとは俺がやっとくから」がNGなワケ

私の顧問先にR部長という方がいらっしゃいます。R部長はとにかく仕事が早く、性格もせっかちなので、なかなか部下に任せることができません。

 

自分でした方が早いし確実だ、という思い込みがあるので、部下が仕事の件で相談に来ても「分かった、あとは俺がやっとくから他の仕事をしなさい」と言って、部下の相談案件を丸ごと引き受けてしまうような方です。

 

あなたなら、このR部長にどんなアドバイスをするでしょう?

 

一見すると面倒見の良い部長のように見えますが、それは大きな間違いです。この方は「部下が自ら気づき学ぶ機会」を奪っているのです。

 

人は教えられたことはすぐに忘れますが、自分で気づいたことは忘れないものです。答えを教えるのではなく、答えに通ずるヒントを与え、部下に考えさせ気づかせることがリーダーには求められています。

 

スピード感や仕事の質はリーダーの方が上に決まっていますが、いわゆる「靴の上から足を掻く」こと、部下の育成をサポートするためには我慢も必要なのです。

 

実際にR部長にこのことを話しました。「あなたが部下の気づく機会を奪っているのですが、そのことにお気づきですか?」と質問したところ、さっぱり分からないという風でした。

 

「今は答えを教えるどころか、お子さんの宿題を代わりにやっている状況です。それではお子さんの学力がつかないのはお分かりですよね? 部下の質問・相談に対して答えを教えてあげる、この方がスピードは確かに上がりますが、これでも部下の学力はつきません。では、R部長ならどんな方法ができそうですか?」と質問しました。

 

しばらく考え込んでいましたが、「中田先生、選択肢を与えて後は任せるという方法ならできそうです」とおっしゃいましたので、その方法を試すことにしました。部下からの質問や相談に対し、ABCの選択肢を与えどれを選ぶかは部下に任せるようにしたそうです。

 

結果、部下から増えたことがあります。それは「報告」です。

 

「部長、先日の相談した件ですが自分で考えてBにしてよかったです」という部下からの報告に対し、R部長は「良かったな。俺もBを選んでいたよ」と返していました。このチームは部下の考える力はもちろん、それ以上に部長と部下の会話が増えたことにより部下の笑顔が増えたそうです。

 

判断を任されることも尊厳欲求を満たすことになり、部下の自信につながります。リーダーは部下に任せることで部下に自ら気づく機会を与え、考えさせることで成長をサポートするのです。

 

 

中田 仁之

株式会社S.K.Y.代表取締役

中小企業診断士

 

※本連載は中田仁之氏の著書『困った部下が最強の戦力に化ける すごい共感マネジメント』(ユサブル)より一部を抜粋し、再構成したものです。

困った部下が最高の戦力に化けるすごい共感マネジメント

困った部下が最高の戦力に化けるすごい共感マネジメント

中田 仁之

株式会社ユサブル

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