(※写真はイメージです/PIXTA)

ある男性の従兄弟が亡くなりました。従兄弟は、男性の家系に代々伝わる土地を承継していましたが、すでに親きょうだいもなく、生涯独身だったため法定相続人がいません。そのため男性は、相続人のいない従兄弟の土地を自分が相続したいと考えています。実現する方法はあるのでしょうか。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が解説します。

亡き従兄弟が所有する、先祖伝来の土地を相続したい

 【相談内容】 

 

横浜市在住の60代の従兄弟が亡くなりました。従兄弟は生涯独身で相続人がいません。

 

従兄弟は私の父の実家に伝わる土地を承継しており、私はそれを自分が相続できたらと考えています。以前、知り合いが「特別縁故者の申立て」という方法があると教えてくれたので、家庭裁判所へ特別縁故者としての申し立てを検討しています。

 

実際のところ、この申し立てによって相続財産を受け取れる人というのはどのような人なのでしょうか。また、私のケースで受け取れる可能性があるのでしょうか。

一般的な従兄弟同士が「特別縁故者」となるのは難しい

 【回 答】 

 

民法958条の3第1項所には、

 

①被相続人と生計を同じくしていた者

②被相続人の療養看護に努めた者

③その他被相続人と特別の縁故があった者

 

とあり、特別縁故者として認められるか否かについては、これのいずれにあたるかが検討されることになります。

 

特別縁故者の申立をした人が、①、②に該当するかは、ケースにもよりますが、「長年の内縁関係」などを除けば、かなり難しいのではないでしょうか。

 

仮に上記①、②に該当しなかった場合、申立人は同項所定の「③その他被相続人と特別の縁故があった者」に該当するものかを検討します。

 

では、ここでいう「③その他被相続人と特別の縁故があった者」とは何を指すのでしょうか。

 

これを少し難しい言葉でいえば、

 

「前述の生計同一者及び療養看護者に該当する者に準ずる程度に、被相続人との間で具体的かつ現実的な交渉があり、相続財産の全部又は一部をその者に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に被相続人と密接な関係があったか」

 

が検討点となります。

 

弊所で取り扱った過去の事例では、

 

●申立人が被相続人の親族であり、幼少期に親代わりとして育てていた。成人後も就職の保証人になるなど、実の親子のような関係が育まれていた。

 

●被相続人のみならず、被相続人の実親両名の療養看護をおこない、死亡前には被相続人の預金通帳類などの管理をすべて申立人に任せていた。

 

●被相続人の亡き夫の実子(連れ子)で、養子縁組はしていなかったが、実質親子のように被相続人の面倒を見ていた。

 

などのケースがあります。

 

いずれも、多少の濃淡はありつつも、生涯にわたり実の家族のような関係を継続してきたものといえます。

 

これらの事情を総合的に勘案したうえで、最終的には裁判所が民法958条の3第1項後段の「その他被相続人と特別の縁故があった者」に該当するかを判断します(裁判所「特別縁故者に対する相続財産分与」参照)。

 

ただ特別縁故者の場合、生前の交流度合いにもよりますが「ほんの一部を受領できるかどうか」と考えておいた方が無難です。

 

被相続人の意思も明確で、こうした相続財産を無駄にしないためには、結果的に「遺言書の作成」が、最もコストの低い最適解となることはいうまでもありません。

 

特別縁故者への財産分与申し立ては、不幸にもこうした遺言書などがない場合の最終手段といえるでしょう。

 

 

近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士

 

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本記事は、司法書士法人 近藤事務所が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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