詰んだ…不動産の所有者が認知症発症で資産凍結、相続人同士のいさかいに。相続の失敗事例から見る「家族信託」の有効性【司法書士が解説】

詰んだ…不動産の所有者が認知症発症で資産凍結、相続人同士のいさかいに。相続の失敗事例から見る「家族信託」の有効性【司法書士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢化が進展する日本において、相続問題に悩む人は少なくありません。なかでも不動産の所有者が認知症を発症した場合は対応がむずかしくなるため、ぜひとも回避したい事態だといえます。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が解説します。

不動産がらみの相続トラブル「典型的なケース」とは?

高齢社会の日本では、65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると推計されています。実際に司法書士の現場で頻発するのが「資産凍結」と「争族(相続トラブル)」です。例えば、下記は典型的な失敗事例だといえます。

 

【都内在住の高齢男性の例】

 

都内在住の高齢男性は、自宅のほか、都内にアパートを所有し不動産経営も行っている。ところが、認知症を発症。所有するアパートの名義を動かす、遺言書を作成して財産の行き先を決めるといったこともできなくなってしまった。

 

男性には相続人として3人の子どもがいるが、子どもたちは将来的に不動産が自分のものになるかわからないため、修繕などの対策も積極的に取り組もうとしない。だが、それでも建物の維持管理や固定資産税といった税金等の経費はかかり続ける。

 

子どもたちの間で対応を巡る口論が絶えなくなり、ただでさえきょうだい仲がよいとはいえない関係がさらに悪化してしまった。

 

結局、「資産を動かせない」、そのために「不動産の管理のが行き届かない」「相続人の関係がうまくいかない」という三重苦に陥ってしまった。

 

*本件は個人情報保護のため、内容は一部改変を加えています。

もし不動産だけでも「家族信託」を組んでいたなら?

もし彼らの父親である男性が元気なうちに、せめて不動産だけでも家族信託を組んでいればどうだったでしょうか?

 

子どものなかで後継者を決め、その子どもを受託者としてアパートに信託を設定すれば、その子どもによる売却や修繕が可能でした。仮に不動産を売却しなかったとしても、不動産という資産を次世代へとスムーズにつなぐことができます。

 

そもそも相続対策といって思いつくのは、これまでは「遺言書」「成年後見」が中心でしたが、それに比べて「家族信託」はなにが違うのでしょうか?

 

◆遺言書とは

一般的に、遺言書は比較的手軽に作れますが、どうしても「点」での対策になります。遺言というのは、いつか来るであろう遺言者の死亡日に、遺言者の財産をどのように帰属させるかを決めることしかできません。

 

たとえば「子に相続させた不動産を、その後孫へと相続させたい」といった柔軟な設計をすることはできません。

 

◆成年後見制度とは?

成年後見制度については勘違いされている方も多いのですが、そもそも認知症を発症して判断能力をなくされてしまった方の制度です。

 

この場合、「家庭裁判所」が申立てにより後見人となる人物を定めます。あくまで後見人を決めるのは「家庭裁判所」であり、家族の事情で決めるものでもありません。

 

非常に強い財産管理権限を持ちますので、たとえば、相続人のだれかがお金を使い込んでいる疑いがあるとか、悪徳商法に騙されるリスクがあるといった懸念には、非常に有用な手段といえます。

 

一方で、裁判所による非常に強い監督権限が発生するため、柔軟性が高い制度とはいえません。また、遺言と異なり、成年後見人制度は「対象者が亡くなる前」の制度ですので、そもそも相続の対策とは相反するものです。

 

◆家族信託の有利な点

家族信託は、このような遺言や成年後見制度の欠点を補う点で、非常に有用な点でもあります。

 

あらかじめ信頼する家族に財産管理を委託しておくことによって、仮に認知症を発症したとしても、成年後見制度に近いような財産管理を、裁判所の監督なしに家族が行うことができます。

 

なにより、家族信託の最大の特徴はその柔軟性だといえます。親から子へ、さらに孫へ、承継先を2段階で決めることも可能で、これは遺言や成年後見では不可能な仕組みです。

 

仮に、生前において信託財産を売却などしなかったとしても、残余財産の帰属先を設定することで、遺言書と同じような使い方をすることができ、一石二鳥の面もあります。

 

ただ、どうしても契約であるため、専門的な知識が必要であり、家族信託の契約書を作成する場合はある程度の費用がかかってしまうという欠点もあります。

 

契約の作成にはある程度の法律知識が不可欠なので、専門家に依頼するのが一般的ですし、そのためある程度の費用もかかります。また税務上の不利益を招くこともあるため、専門家の関与が不可欠です。

 

近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士

 

 

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本記事は、司法書士法人 近藤事務所が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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