「相手が失敗する自由」を認められるか
では、同調圧力から自由になれる“大人”の在り方とはどんなものでしょうか?
ここでもう一度ワクチンに話を戻しましょう。
あるとき、とある方が「家族に『ワクチンは危険だから打つのをやめなさい』といくら説得してもやめないんです」とおっしゃっていました。
しかし、ここまでの説明を読んだみなさんは、もうこの同調圧力のカラクリに気がつけるはずです。
この方が「ワクチンは危険です」という同調圧力に流されて、自分も同調圧力チルドレンになってしまったのだと。
そして、「家族がいなくなっちゃったら寂しい!」という“子ども”の思考で、「ワクチンを打たないでほしい」と自分ではない人に強要していることも。
ですから、「あ! 私、同調圧力に流されて“子ども”になっているんだ」と悟ることができたら、「“大人”はそれぞれ個人の意思を尊重する」ということを思い返してみましょう。
自分が“大人”で、責任を持って選択する権利があるのだったら、“大人”である自分の家族にも同じように自由な選択をする権利がありますよね。
冷たく聞こえるかもしれませんが、たとえ家族がこれからしようとするその選択が誤りの可能性が高いように見えたとしても、それはその人が“大人”として責任をとって判断した結果なのです。
これが同調圧力に流されて同調圧力チルドレンになってしまうから、暗黙のうちに「家族は自分のために存在する」かのようになってしまい、家族が失敗する自由を許容できない。
「あなたのことが心配……」と言いながら、結局は自分の安心のために、同調圧力をかけて相手の言動を制限してしまう。
そう、“子ども”の状態だからすべてが自己中心的な思考になって、自分の都合のいいようにしか目の前のことを捉えられない……。
自分にとって都合が悪いことは「間違っている!」という同調圧力をかけてしまい、自分が同調圧力をかけられると「私に強要するなんて最悪!」と怒りを露(あら)わにして、逆の同調圧力に流されていく……。
結局のところ、すべて自分に都合のいいように、あらゆる向きから吹き荒れる同調圧力にその都度流されているだけなのです。
だから、「あ! 私だって同調圧力チルドレンになっている!」ということに気がつくこと。
そう認めてみることで、一度リセットして“大人”の自分に戻れます。
不思議なことに、“大人”になってみると、「あれ? 自己中心的に同調圧力をかけてくる“子ども”の状態の人があまり気にならないかも」と思えてくるものです。
ちょっと前まで自分がそうだった、と少し恥ずかしくはなりますが、“大人”になってみると、世間的な同調圧力に流されにくくなり、見失っていた自分がしたいこともちゃんとわかってきます。
そして、誰がどんな状態になっても、「それは相手が選択したことだから」と責任をちゃんと相手に受け渡してあげることもできる。
自分は自分で、自らの選択に責任を持つことができ、しっかりと前を向いて歩けるようになるのです。
大嶋 信頼
株式会社インサイト・カウンセリング
代表取締役