「ウチは常に“他店より安く”。」エブリデイ・ロープライスを実行した老舗デパートの大誤算…無自覚で恐ろしい消費者心理

「ウチは常に“他店より安く”。」エブリデイ・ロープライスを実行した老舗デパートの大誤算…無自覚で恐ろしい消費者心理
(※写真はイメージです/PIXTA)

伝統的な経済学では、人はいつでもどこでも合理的であると仮定しますが、現実の私たちは損得計算や行動を間違えることも珍しくありません。税抜価格を表示すると売上が上がったり、200円よりは198円にするなど、キリの悪い数値にした方が割安に感じられたり…。太宰北斗氏の著書『行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-』(ワニブックス)より一部を抜粋し、「消費者が感じる“お得感”の不思議」を見ていきましょう。

価格差は「500円」だが…あなたはどちらを選ぶ?

セイリアンスがどのようにみなさんの購買行動に影響しそうか、ここで質問です。

 

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【質問1】1万5000円のジャケットを買おうとしています。10分ほど歩いた別の店舗で同じ商品が500円安く売られているとき、そちらの店舗まで歩きますか?

 

【質問2】1500円のTシャツを買おうとしています。10分ほど歩いた別の店舗で同じ商品が500円安く売られているとき、そちらの店舗まで歩きますか?

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多数派の人であれば、質問1では購入する店舗をわざわざ変えないのに、質問2では歩いて違うお店に買いに行きます。

 

ここまで読んできたあなたなら、この質問と回答の関係のおかしさは気づいていただけるでしょうか?

 

どちらの質問も、聞かれているのは「10分歩いて500円節約する気はありますか?」ということでしかありません。

 

この質問の背景にはフレーミングの影響もあるのですが、おそらく多数派の人はこう考えたはずです。

 

「1万5000円の買い物のときの500円はわずか3%に過ぎず、大した違いはない。でも、1500円の買い物のときには30%を超していて大きな違いだ」

 

つまり、単なる500円の差は、安い買い物をするときに、より注目されることになったわけです。こうした購買行動の特徴は、主に次の2点にまとめられます。

 

●何を買おうとしているかというコンテクストによって、(たとえば品質を気にするか価格を気にするか)判断の軸は変わる

 

●商品の価格や品質の差は、単純な差ではなく、基準となる商品との比率で捉えられている

 

1点目については、家を建てたり結婚式を挙げたり、車を購入するとなれば、お金を平然と使う状況を思い返してみてください。

 

特別なシチュエーションでそのもの自体がもたらす価値(品質)に関心がいってしまえば、価格差はあまり判断の重点とはならない、というわけです。

 

2点目についてはもう少しだけ確認しましょう。質問1でも質問2でも割り引かれる金額は変わらないのに、なぜだか1万5000円の買い物をするときのほうが気になりませんでしたよね。

 

これは1万5000円という参照する数字を基準に、比率で節約額の価値を計算しているということになります。

 

たとえば、普段、スーパーマーケットの買い物では発泡酒の10円差を気にするのに、高級焼肉店では焼酎の100円差は気にならないという状況です。

 

つまり、高額な商品を買うときには消費者は価格の差をそこまで気にしないのに、低価格の商品を買うときほど細かな価格差が関心を集めやすい、というわけです。

次ページ家賃の目安も「慣れ」次第

※本連載は、太宰北斗氏の著書『行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-

行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-

太宰 北斗

ワニブックス

「税抜価格を表示したら売上が上がる!?」 「経済学を学ぶと所得が上がる!?」 「競馬で賭けるなら“本命” “大穴”は外すべき!」 「3割バッターが最終試合を休む理由とは?」etc. “リアルに得する経済学”をおもしろい…

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